戦犯としての民主党中道派エリート
他方、民主党エリートたちは左派のせいで、トランプに攻め込まれたと怒っている。バイデンに対し「社会主義者」のレッテル貼りを許し、過激派イメージをつくらせたことが「敗北」の原因だと言うのだ。
そうだろうか。AOCは、2年前の自身の経験を生かすべく、すべての議会選接戦区での応援を民主党議会選対に協力を申し出たが、選対は渋った。その結果、接戦州で彼女の応援を受け入れたのは5選挙区だけで、そこでは勝利したが、受け入れなかったところは敗北の憂き目を見たという(11月7日付ニューヨーク・タイムズ紙インタビュー)。
ここにはすでに民主党中道派の左派はずしの姿が見える。DSA支援の「スクワッド」の躍進やAOCの支援を受けた議員らの当選をみると、左派全体の好調がうかがえる。そうであろう。いまの超格差社会アメリカで、人々は右ならトランプ、左ならサンダーズ、つまり左右のポピュリズムにしがみついて、救済を求めていくほかないからだ。
バイデンを含む民主党中道派エリートこそが、トランプ出現以前の共和党主流派と一緒に今日の超格差社会を生んだ「戦犯」だからだ。本来なら地滑り的勝利を得るべきバイデンと議会民主党が「敗北」に等しい、情けない勝ち方しかできない理由はそこにある。
民主党中道派のバイデン政権が発足しても、党内の左にサンダース派、右に共和党の中に生き続ける「トランプ後のトランピズム」に挟撃され、時に社会主義的あるいは「アメリカ・ファースト」的な国内の中産・下層階級からのポピュリズムの声に応える政策を打たざるを得なくなるだろう。
この左右の力は通底している。似たような問題に似たような打開を求めている。それを政治が受け止めなければ、混乱はいつまでも続くだろう。いずれにせよ、アメリカは当面の内向きの時代が続く。なんでもアメリカ頼りで来た日本は覚悟しておいた方が良い。