2020.11.22
# 新型コロナウイルス

世界初!360万人が受けたスロヴァキアの「全国一斉コロナ検査」、現地で味わった混乱と希望

増田 幸弘 プロフィール

検査をめぐる対立

いつから一斉検査を検討したのか、首相はいまのところ明言を避けている。関係閣僚も口を濁す。議題にのぼったのは発表の2日前だったのはわかっているが、さかのぼれば世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長(55歳)が3月16日に「テスト、テスト、テスト」と世界に向けて訴えたことにあるはずだ。

検査をめぐっては、やるべきとの意見と、やっても意味がないとの意見が対立してきた。医療関係者や専門家のあいだでも、答えの出ない分断が生じ、なにが正しいのか戸惑うばかりだった。スロヴァキアでももし事前に討議したら平行線を辿っていたにちがいない。事実、発表してからズザナ・チャプトヴァー大統領(47歳)や医師会を巻き込み、ぎりぎりまで紛糾した。だからこそ電撃的な発表にならざるをえなかったのだろう。

人口60万人のルクセンブルクで 5月から7月にかけて全国民を対象に検査がおこなわれた例があるが、国を挙げて一斉に検査するのは世界でもはじめての試みになる。人口990万人の武漢市や490万人の青島市など、中国の都市で全市民を対象にした検査がおこなわれているが、参考にすべきノウハウはないに等しく、手探りで取り組むしかなかった。

 

22日の夜明け前、約300万個の検査キットを載せて韓国のソウルを出発した世界最大級の輸送機アントノフAn-124が、ブラチスラヴァ空港に着陸。史上最大の作戦がいよいよはじまる。第一波では同型機が医療用の防護服やN95マスク、人工心肺装置など治療に欠かせないものを中国などから次々に運び入れていた。見ていて、これが兵站であり、外交なのだと思い知らされた。

この日、どのような流れになるのか、軍の作成した映像が検査のためにつくられたサイトにアップされた。わかりやすいが、軍独特の規律正しさと無駄のなさがあり、検査が軍事行動に位置づけられているのを伺わせた。

採用された検査キットはSDバイオセンサー社のCOVID-19 Ag Testで、WHOにも認められている。計1300万個あまりが発注済みで、23日にも別便が届く手はずだった。テストの費用は1回あたり3.90ユーロから4.45ユーロになるとこの時点で公表された。

COVID-19 Ag Test

このキットによる検査は抗原テストと呼ばれ、採取した検体を増幅するPCRテストに比べて精度は劣るが、検査機器が必要なく、15分ほどで結果が判明する利点がある。しかし、全国検査を通じて最大8万の偽陽性と2万5000の偽陰性が出る可能性があり、検査の意味を問う声が次々にあがった。とくに問題にされたのが陽性なのに陰性とされる偽陰性である。専門家抜きで決めたことへの不満が背景にあり、政治的なパフォーマンスにすぎないとの批判もあった。だからといってスロヴァキアにはPCRテストの処理能力が1日およそ2万2000件分しかない。

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