2020.11.22
# 新型コロナウイルス

世界初!360万人が受けたスロヴァキアの「全国一斉コロナ検査」、現地で味わった混乱と希望

増田 幸弘 プロフィール

本番前の大混乱

パイロットテストはユネスコの世界遺産に登録される街バルデヨフを含む、4つの地区でおこなわれた。集会が制限されるとの噂が流れたことから、三日三晩飲み明かす伝統的な結婚式を駆け込みでおこなうカップルが多数いたのが蔓延の一因とされた。

3日間で14万人が検査し、このうち陽性者は5594人で、陽性率は3.97%だった。この間、感染者の増加が止まらないことから、24日に国境を閉じない、部分的なロックダウンがはじまった。もし国を完全に封鎖した場合、経済損失は3週間で20億ユーロになると推定されるが、テストの費用は総額1億ユーロ程度、ロックダウンの1日分ですむと首相は説明した。経済活動をできるだけ止めずに感染者を抑えるにはどうすればよいか、その答えが全国一斉検査とロックダウンの組み合わせだったわけである。ただし3週間以内に減少をはじめなければ、春より厳しい条件で完全に封鎖するとした。

パイロットテストにもとづき、本番の詳細が固められていく。人員の確保がむずかしいことから、当初、3日かけておこなう計画だったのが土日の2日間に短縮された。65歳以上は参加しなくてもよくなり、自宅で検疫できない陽性者には3食付きの宿泊施設が有償で用意された。

その一方、8人の科学者が大統領と共同記者会見をひらき、検査の結果を都合よく解釈することなく、科学的な知見を尊重すべきとの声明を発表する。パンデミックを乗り切るにはだれもが納得する、効果的な対策をおこない、国民の信頼を得るのがなにより大切だと加えた。

 

大統領制を敷かない日本ではその役割がいまひとつわかりにくい面があるが、スロヴァキアでは国民の側に立って総合的、俯瞰的に政治を調整する働きがある。必要な医療関係者が1000人単位で足らず、会場の6割しか準備できていないと検査の前々日に軍から報告を受け、このままでは一斉検査を成功させるのはむずかしいと懸念を示したのはその一例である。医師会も検査に集まった人たちが集団感染しかねず、再検討を要請した。

緊急事態宣言下では医療関係者を動員することができ、その文書もできていたが、実際にはお金で解決しようとした。1日あたりの報酬を100ユーロにあげるとともに、両日ともにやれば500ユーロのボーナスを出すことにしたのである。危険手当と合わせ、2日でスロヴァキアの平均月収に近い1000ユーロの稼ぎになると首相は協力を訴えた。ほかにも問題がいくつも噴出し、全国規模での一斉検査なんてほんとうにできるのかと心配になるほど、最後の最後までごたついた。

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