縛って、拷問して、殺す…25年間も殺人を続けた「B.T.K.キラー」の素顔

彼にとって被害者は「人形」にすぎない
阿部 憲仁 プロフィール

しかし、これがあだとなった。「文章ファイルを入れたフロッピーディスクを送ってやり取りしたいが、そこから素性がバレることはないか?」と聞いてきたB.T.K.に対して、犯人逮捕を狙う警察は「ファイルを作成した人物の身元まではたどることができない」と嘘をつく。

そしてB.T.K.から送られてきたフロッピーディスクを警察が解析したところ、そこから最後にアクセスした人間の所有者情報が判明し、身元が特定されたのだ。30年以上ウィチタ市民を恐怖の渦に巻き込んだB.T.K.キラーだが、逮捕のきっかけは「警察にあっさり騙される」という非常に幼稚なミスだった。

その後の裁判では、被害者1人につき終身刑1回、合計で「終身刑10回」を宣告され、デニスは今もカンザス州の施設に収容されている。

デニス・レイダーを逮捕するために、彼の自宅を訪れた警察官[Photo by gettyimages]
 

原因となったのは幼少期の経験か

デニスはなぜ、このような凶行に至ったのだろうか。彼自身は10人を殺害した原因を「Factor X(謎の要因X)」と呼び、自分ではコントロールできない「超自然的な力」によって殺人を犯したと語っている。この「Factor X」とは一体何であろうか?

原因のない行動はない。デニスの場合、幼少期の経験が大きな影響を与えていると思われる。先述の通り彼の母親は攻撃的な性格で、デニスは自分が彼女から嫌われていると思っていた。そのような幼少期に身動きが取れなくなった母の姿を見て覚えた興奮が、彼の心に深く刷り込まれたのではないだろうか。

それ以降の犯行は、彼にとって「自分を顧みなかった母親への無意識の復讐」だとも考えられる。つまり振り向いてくれなかった母親の代わりに被害者たちを思い通りに扱って、自分の中に無意識に蓄積された怒りをぶつけていたのだろう。

俗に「三つ子の魂百まで」という言葉がある。生まれたばかりのヒヨコが、最初に目にしたものを親と思い込むのと同じで、物心つく前の臨界期(0~3歳の時期)に経験した出来事は、その人間の人格に深く刻み込まれるのだ。

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