縛って、拷問して、殺す…25年間も殺人を続けた「B.T.K.キラー」の素顔

彼にとって被害者は「人形」にすぎない
阿部 憲仁 プロフィール

この時期に他者から攻撃的な反応を受けると、その後一生、攻撃性を抱えて生きていく者もいる。しかし当人にしてみれば、3歳以前の出来事など記憶にないのが普通である。これこそデニスが呼ぶところの「Factor X」ではないだろうか。つまり本人が覚えていないほど幼い時期に経験した出来事が、大人になってからも彼の行動を左右していたことになるのだろう。

その一方で、幼少期に母親から関心すら向けられず、正常なコミュニケーションの機会がなかったデニスは、学生時代は内気で目立たない存在であり、その分、心のどこかに「注目されたい」という強い願望を持っていたのではないだろうか。そんな精神的「幼さ」を抱えていたからこそ、わざわざマスコミや警察と接触して目立とうとし、逮捕のきっかけをつくってしまったと思われる。

法廷でのデニス・レイダー[Photo by gettyimages]
 

犯行を特徴づけた「強迫性」

もう一つ重要な彼の特徴は、「強迫性」である。幼少期に親からネグレクトされてしまった子どもの中には、本来であれば他者とのコミュニケーションで埋めるべき心の空白を、他のモノ(物・抽象的対象・空想)で代替する者がいる。

かまってくれない母親の代わりに、デニスは自分自身の行動を「完全に制御してルーティン化」することに執着するようになった。軽度の強迫性を抱えた人の場合、「畳んだタオルがすべて同じ形でないと耐えられない」「廊下にチリ一つでも落ちていると気になってしまう」といった事例が思い浮かぶ。

デニスの場合はこの延長線上にあり、彼が「絞殺」という手口にこれほど執着したのは、「自分で直接、被害者の呼吸を止めたい」という強迫観念にとらわれていたからだろう。

「一度決めたらその方針は絶対に変えない」。このような性格は、凶悪な犯罪者たちの多くに共通する特徴だ。だからこそ彼らは皆、越えてはならない一線を越えてしまったのだろう。

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