2020.12.07

再びコロナ禍のモヤモヤに悩む前に、知っておきたい「脳」の適応力

脳研究者・池谷裕二教授に聞く
早川 洋平 プロフィール

――この時期「免疫力を高めよう」という話もよく耳にしますが、できることはありますか?

池谷 脳の観点からいえば、「笑顔を作ることは良い」とされています。笑うことで免疫力が高まるというのは人でも動物でも研究が出ているので、つくり笑顔でも構いません。まずは口角をあげてみるところから始めてみましょう。

――「体の動き」が脳に作用するということは、やはり運動すること自体も大切でしょうか?

池谷 そうですね。筋肉を鍛えておくと、様々な衰えが食い止められます。実は、年をとったとしても脳が目に見えて衰えることはありません。

例えば「年をとるにつれて本の内容が頭に入ってきづらくなったり、集中力が持たなくなったりしてきた」という感覚は誤解です。

「筋力が落ちてきたため、同じ姿勢で本を読むのがきつくなってきた」「視力の衰えにより長時間読み続けるのが難しくなってきた」というのが正しい認識です。

キーワードは「好奇心」

――これからの時代に強いのはどんな人だと考えられますか?

池谷 「好奇心が強い人」「何でも楽しむことができる人」だと考えます。彼らの多くは多少の逆境があっても、何かと工夫して物事を続けていくことができる人たちです。

人間がミスしがちだったり、やりたくなかったりすることを、AIがどんどんこなしてくれる時代に入った、といわれた矢先で今回のコロナ禍。いっそうITが発達して、その流れはさらに加速していくでしょう。

プログラムされたAIと囲碁で勝負したとして、人間が勝つことは不可能に近くなりつつあります。今やトップレベルのAI同士の囲碁の対局となるとその強さは圧倒的です。

でも、だからといって囲碁のプレイヤーたちは「あとは強いAIたちに任せて……」と言って囲碁をやめたりはしないですよね!? 「楽しむ」とはそういうことなんです。これは、人工知能が持っていない人間だけのものです。

脳科学者・池谷裕二教授

――人には好奇心があるからこそ、創造力が育まれ、より良いものが生まれてきたのですね。

池谷 好奇心は狩猟時代、農耕時代、そしてインターネット時代の人間すべてに共通して備わっているものだと思います。

だからこそ、結果的に私たちはこれまで生き延びられてきました。ITやAIの発達が加速しているいまこそ、ITでできることはどんどんそれらに任せて、私たちはもっと自由に発想して楽しんでいくことを忘れてはいけないと思います

 

※今回インタビューの一部は下記よりご覧いただけます。

いけがや・ゆうじ/1970年生まれ。98年、東京大学で薬学博士号を取得。2002〜05年のコロンビア大学(米ニューヨーク)留学をはさみ、14年より現職(東京大学薬学部教授)。専門分野は神経生理学で、脳の健康について探究している 。また、18年よりERATO脳AI融合プロジェクトの代表を務め、AIチップの脳移植によって新たな知能の開拓を目指している。文部科学大臣表彰 若手科学者賞(2008年)、日本学術振興会賞(13年)、日本学士院学術奨励賞(13年)などを受賞。『海馬』『記憶力を強くする』『進化しすぎた脳』など著書多数。近著に『脳はすこぶる快楽主義』『こころキャラ図鑑』がある。
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