「大阪都構想」再否決、それでも維新は驚きの「3回目」を狙う?

維新戦略の失敗とその後
村上 弘 プロフィール

(2)維新戦略の失敗その1――大阪市廃止を隠し通す作戦の限界

橋下前市長以来この10年間の一貫した維新の作戦は、「大阪市廃止」について徹底して市民に説明しないことだ。「市は残る」と言うと詐欺だが、市の廃止という重要事項を隠しても詐欺ではないということだろう(マンションや株式のセールスなら、後者でも許されない)。

今回も、根拠法の冒頭第1条に明記されている「大阪市廃止」について、維新の知事・市長そして行政広報までも、沈黙した【注3】。

代わりに繰り返したのは、夢としての「大阪都」や「府市一体化」、そして大阪衰退をもたらす絶対悪・敵=府市の「二重行政」を解消する、という、あいまいかつインパクトのあるスローガンだった。

このポピュリズム(扇動政治)的な「敵を攻撃する単純化した夢」は、今や行政や企業の常識になった説明責任のモラルに反するが、たしかに有権者とマスコミが賢くなければ効果は絶大だ。

ところが大阪には幸い、(1)のように多様な民主主義がぶ厚く残っていて、「大阪市廃止」という争点(アジェンダ)設定が広まり、維新の沈黙戦術は裏目に出た。

一定の範囲の有権者は「えっ、大阪市は廃止なのか。そんな大事なことを、知事と市長は隠しているんか」という感情を持っただろう。

また、維新はおそらく、仲間うちでの熟慮や議論を完ぺきに抑圧・コントロールしていたゆえに、市民の疑問に答えて、大阪市の実績評価と市廃止のマイナスについて説明する準備ができていなかった。

大阪市廃止という事実を知るに至った場合、都市整備や産業振興など重要政策をすべて府に委ね、住民サービスも特別区に分割されてしまうことに、不安・不信を持った人々が相対的に多かったということになる。

衰弱して頼りにならない市の場合以外なら、当然の感情であり、むしろ不安を持たず「大阪都」に賛成票を入れた人が半数に迫った心理と宣伝のメカニズムを、分析すべきだろう。

2018年、市民団体がこの陳情を行い市議会で採択されたことは、2020年になって、投票用紙の変更、市の広報、マスコミの報道などに大きな影響を与えることになった。
 

(3)維新戦略の「失敗」その2――多くの「二重行政」の解決による、大阪市廃止=大阪都の必要性の消滅

世論調査で、賛成の有権者の理由は、「思い切った改革が必要」「二重行政の解消」が特に多かった。前者は、まさにポピュリズムに扇動され、強いリーダーをどこへ連れて行かれても応援する感情で、無党派層の増加、新聞を読む習慣の低下【注4】などに由来する。

理由の後者つまり府と市の「二重行政」には、1. 巨大都市の需要に対応し便利なもの、2. 市外・市内で地域分担して問題ないものとともに、3. ムダなものも含まれるので、維新によるこの間の大阪観光局への統合などは、私もプラス評価をしたい(保健衛生研究機関や、東京と比べて圧倒的に少ない大阪の国公立大学のうち府と市のそれを統合して減らす決定には、賛否両論があろう)。

さらに、「二重行政」の定義がどんどん拡張され、府・市共同の大型(広域)政策の意思決定も含むようになったが、その視点からの地下鉄なにわ筋線の建設決定(関空利用者が増えたのでやっと費用対効果が成立?)なども、維新以前の大阪市などによる膨大な成長戦略【注2参照】への追加であり、地域発展のメリットがある。

しかし、維新が問題のある二重行政や一部で遅れていた大型プロジェクトを解決した結果、あとに残るのは、便利な二重行政と、府と市が別々に行ってもよい(その方が創意工夫、競争、多様化できる)政策だけとなった。

2020年夏の副首都推進局の最終文書は、大阪都にしないとできない、新規の成長戦略や二重行政の廃止を具体的に記載せず【注5】、一般にも「大阪都=大阪市廃止の必要性が分からない」という印象が広まった。

このように、府と政令指定都市の「二重システム」(先進国では、パリ市とイルドフランス州、台北市と周辺の新台市など、都市・広域自治体の並立は国際標準)のデメリット部分を中心にして、維新は「改革」を進めた。

ところが、まさにその維新統治の成果によって、二重システムのメリットまで捨てて「大阪都」に進む必要は、2015年の住民投票時よりもさらに減り、客観的にほぼ消滅したわけだ。

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