なぜアメリカの大学ではポリティカル・コレクトネスを重視する風潮が強まったのか。本連載では、その要因を「世代」にスポットを当てながら社会学的・心理学的に分析した書籍『アメリカン・マインドの甘やかし』(未邦訳)の議論を紹介する。
第一回:「アメリカの大学でなぜ「ポリコレ」が重視されるようになったか、その「世代」的な理由」
第二回:「「ポリコレ」を重視する風潮は「感情的な被害者意識」が生んだものなのか?」

ポリコレと「世代」の関係
前回と前々回の記事では、アメリカの大学で起こっている「ポリティカル・コレクトネス」にまつわる問題における特徴について、憲法学者のグレッグ・ルキアノフと社会心理学者のジョナサン・ハイトが共著『アメリカン・マインドの甘やかし:善い意図と悪い理念は、いかにしてひとつの世代を台無しにしているか(The Coddling of the American Mind: How Good Intentions and Bad Ideas Are Setting Up a Generation for Failure)』(未邦訳)で行っている議論を紹介した。
アメリカの若者たちが起こしている問題には、彼らが三つの誤った考え方=「三つの不真実」を信じていることが示されている。具体的には、以下のようなものだ。
・ 脆弱性の不真実:人は傷つくことで弱くなる
・ 感情的推論の不真実:常に自分の考えに従え
・ 私たち対やつらの不真実:人生は善い人々と悪い人々との闘いである
そして、これらの不真実をアメリカの若者が信じるようになった背景には「六つの原因」が存在する、とルキアノフとハイトは論じている。
六つの原因のなかにはアメリカの政治的・社会的な特徴も挙げられている一方で、1990年代後半に生まれて2010年代中頃から大学への入学をはじめた若者たちの世代的な特徴も含まれている。