2020.12.09
# 企業・経営

NTTドコモの激安新料金プラン「ahamo」の「ヤバすぎる真実」…!

業界の疲弊は目に見えている
加谷 珪一 プロフィール

問題は、実際にどの程度、その回線が使われているのかという点だが、ここでもドコモが圧倒的に有利だ。1契約者あたりのトラフィック量(データ通信)を比較すると、何とドコモはKDDIの6割、ソフトバンクの半分しかない。多くの回線を保有しているにもかかわらず、ドコモの利用者はあまりその回線を使っていないことになる。

 

業界全体が疲弊する可能性が高い

ドコモがここまで思い切ったプランを提示できたのは、回線容量に余裕があり、格安プランでシェアが拡大しても設備が耐えられると踏んだからだろう。だが、回線に余裕のない競合3社が同様のプランに移行した場合、回線品質を維持するための追加負担が発生する可能性が出てくる。つまり、今回の料金引き下げは、ドコモ以外の携帯通信会社の経営を圧迫する可能性が極めて高い。

もうひとつの注目点は、これまで料金引き下げの切り札とされていた仮想移動体通信事業者(MVNO)、いわゆる格安SIM事業者の動向である。

格安SIM事業者は自前で回線を持たないので、ドコモやKDDIなどの事業者から回線を借りてサービスを提供している。このためドコモやKDDIが格安SIM事業者にいくらで回線を提供するのかで、格安SIM事業者の業績はほぼ決まってしまう。回線の販売価格は設備コストに一定の利益などを上乗せして算定されるので、大きくは変動しない可能性が高い。したがって、格安SIM事業者がドコモなどに対抗してさらに割安なプランを提示すれば、やはりそのまま利益の減少につながってくる。

格安SIM事業者の1社である日本通信は、ドコモのahamoに対抗するため、20Gバイトで1980円というさらに驚異的な安値プランを表明している。各社がこれに追随した場合には、格安SIM事業者も巻き込んだ果てしない安値競争が行われることになる。業界全体が疲弊する可能性はかなり高くなったと見てよいだろう。

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