医療崩壊への危機感…都医師会長が「新型コロナ専門病院」設置を本気で提唱するワケ

田原総一朗×尾崎治夫(3)

「勝負の3週間」「Go To一斉停止」にもかかわらず、コロナ感染者が急増している。日本は何をすべきなのか? 抜本的な解決策はあるのか? ジャーナリスト・田原総一朗氏と東京都医師会の尾崎治夫会長が語り合った(「崎」の正式表記は「たつさき」)。

(構成:本郷明美/写真:山本華)

急激な合理化、デジタル化は危険

田原 新型コロナ関連の倒産件数がどんどん増えています。政府の統計だと少ないんだけど、ほんとうは100万件以上だと言う人もいる。失業者も200万人を超えました。政府はどう対応したらよいのか。

今、2つの説があります。まずは、できるだけ補償すべきだという説。もう一つは、菅内閣の成長戦略会議の委員になったデービッド・アトキンソンさんらが言っているのですが、この状況はむしろチャンスだという説。日本は中小企業の数が多すぎる、これを機会に合併、再編成すべきだということです。日本はどちらでいくべきでしょうか。

田原総一朗氏
 

尾崎 私は経済の専門家ではないのでわかりませんが……。ただ、日本というのは、我々医療機関もそうですが、小さい企業、組織がうまく協働、連携して成長してきた国なのではないでしょうか。

あまり合理化して大きくすると、細かい対応ができなくなる。日本的技術が生かされなくなってしまうのではないでしょうか。欧米流の合理的一本やりの手法というのは、日本ではあまり進めるべきではないと個人的には思います。

田原 医療でいえば、初診は対面診療が原則だったのに、今回の新型コロナ禍で最初からオンラインでもよくなった。これはどうですか。

尾崎 流行当初は、どんなかたちでうつるかもわからないし、みなさん恐怖を抱きます。そうした状況で、初診からオンライン診療を認めるのはやむを得ないと思います。

ただ、今回の新型コロナ禍を突破口にし、初診オンラインをすべてOKにしようという意見には疑問があります。オンライン診療のシステムでチェーン展開しているクリニックも増えており、東京に本部を置き、全国の患者さんをオンラインで診ることも可能です。

こうした手法と、我々が考えている地域に密着してきめ細かく対応する、いわゆる「かかりつけ医」中心の制度は相容れないと思う。私はオンライン診療ももちろん必要だし、真っ向から対立するわけではないんです。

ただし、初診だけは対面にする必要があると思います。何度かそのクリニックで診療を受けている人が診療を受けるときは、オンラインでも大丈夫だと思いますが、やはり実際に対面する、触診などは大事です。

さらに、悪用すれば、なりすまし、本人ではない人が健康保険を使って薬を手に入れたりしやすくなってしまう。まったく見ず知らずの人に初めからオンライン診療というのは、いろんな問題が起きてくると思います。

関連記事