2020.12.14

【マンガ】マスコミは報じない…「なぜ増税はダメなのか」は「MMT理論」で説明できる

中野剛志著『マンガでわかる 日本経済入門』(講談社)が話題になっている。経済評論家の中野氏は「なぜ日本経済が長期停滞しているのか?」という、誰もが抱く疑問に真正面から切り込み、デフレが終わらない理由から、今話題のMMT(現代貨幣理論)をどう理解すればいいのかを解説している。
Amazonでは、「マクロ経済の入門書にぴったり」「小学校高学年以上、全国民必読」と、とっつきにくい経済書のイメージが変わったとのレビューが多数。そんな同書の第二章では、「そもそも、貨幣の価値とはなんなのか」について解説する。マンガと解説を無料公開しよう。第一章はこちら

「貨幣」とは、すなわち「負債」である

貨幣とは、何か。これについては大きく分けて二つの説があります。 一つは、貨幣が物々交換によって発展したという「商品貨幣論」です。しかし、この「商品貨幣論」は間違いであるということが、歴史学や社会学あるいは人類学の研究によって判明しています。

というのも、貨幣が物々交換から発展したという証拠はないのです。それどころか、金属貨幣が発明されるよりも数千年も前のメソポタミア文明やエジプト文明では、税の徴収や支払いなどを計算するための単位として、すでに貨幣が使われていたことが分かっています。

それに、この「商品貨幣論」の説明では、人々がどうして紙幣を単なる紙切れではなく、価値があるものとして信用し、貨幣として使っているのかがよく分かりません。

もう一つの貨幣の考え方は、「信用貨幣論」というものです。「信用貨幣論」とは、貨幣を「商品」ではなく、「負債の一種」と考える説で、結論から言えば、「信用貨幣論」が正しい貨幣論です。

イングランド銀行の季刊誌 (2014年春号)に、貨幣について入門的な解説がありますが、そこにもこう書いてあります。「今日、貨幣とは負債の一形式であり、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債である」

ここで言う「負債」の意味は、マンガでもたとえ話で説明していますが、「ロビンソン・クルーソーが春に野イチゴを収穫してフライデーに渡し、フライデーは秋に獲った魚をクルーソーに渡すことを約束する」としたら、春の時点では、フライデーはクルーソーに対して、「秋に魚を渡す」という義務が生じています。

 

この義務が、「負債」です。 そこでフライデーが、「秋に魚を渡す」という「借用証書」の紙切れをクルーソーに渡すとしましょう。 その「借用証書」という紙切れには、言うまでもなく「フライデーから、秋に魚に交換してもらえる」という価値があります。

そうすると、例えばサンデーという人が火打ち石を持っているとしたら、クルーソーは「借用証書」と火打ち石を交換できるかもしれない。つまりクルーソーは「借用証書」で火打ち石を買えるのです。

さらに、「借用証書」を受け取ったサンデーは、マンデーの持っている干し肉が欲しくなったら、マンデー に「借用証書」を渡して、干し肉を受け取るかもしれません。これは、サンデーが「借用証書」で、 干し肉を買ったということです。

この場合、「借用証書」、つまり「負債」は、クルーソー、フライデー、サンデー、マンデーの間で、「貨幣」として使われています。これが、「貨幣は一種の負債である」ということの意味です。

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