マスコミが絶対に報じない、猟奇的な「座間事件」が起きた本当の理由

2種類の殺人の「ハイブリッド」だった
阿部 憲仁 プロフィール

だが、約2ヵ月間に9人を殺害するという、驚異的なスピードで犯行を重ねていた白石被告は、遺体の処理よりも次の犯行へ意識が向いてしまったと考えれば納得がいく。胴体部分は解体できても、手間のかかる頭部が後回しになっていたのであろう。

もっともこの点については、被害者たちの頭部が、白石被告にとって殺人の「記念品」になっていた可能性も捨てきれない。連続殺人犯の中には、犯行現場に戻って自分の殺人行為を確認したり、被害者の所持品を「記念品」として手元に置いておいて犯行を思い出したりする者もいる。彼らにとっては、「殺害=偉業の達成」といった意識があり、「記念品」はそのトロフィーに当たるため大事に保管しておく傾向がある。

たとえば1978年から1991年にかけて、アメリカのオハイオ州やウィスコンシン州で17人の青少年を殺害した「ミルウォーキーの食人鬼」ジェフリー・ダーマーは、頭部や胴体など被害者たちの遺体の一部を意図的に自室に保管し、すでに処分して手元にない遺体についても、写真を撮影して保存していたという。遺体そのものや写真を定期的に見返すことで、犯行の瞬間を思い返していたのだろう。

法廷でのジェフリー・ダーマー[Photo by gettyimages]
 

警察がアパートに踏み込んだ際、白石被告は「Aさんの頭はここ、Bさんのはここです」といったように、被害者の頭部の場所を正確に説明している。おそらく彼は、頭部の存在を意識しながら生活していたのではないだろうか。

少し話がそれたが、大量殺人と連続殺人に話題を戻そう。ここまで見てきた通り、座間事件には、連続殺人的な特徴が色濃く見られるが、一方で大量殺人的な要素も見られる。そう感じたのは、公判での白石被告の言動がきっかけだ。

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