中国人が「高齢になっても働かされ続ける日本人」に衝撃を受ける理由

「死ぬまで働きたいの?」
高口 康太 プロフィール

親方日の丸ならぬ「親方五星紅旗」で、のんべんだらりと窓際族を決め込んだ公務員や国有企業の従業員は別だが、民間企業の社員は朝から晩までモーレツに働く。家事も子育てもやっている時間はないので、定年退職した中高年が代わりに家事と子育てを担当するというのが、現代中国の典型的な家族構造として定着しつつある。

収入面が気になるところだが、子ども世代の支援と年金が二本柱となる。中国も核家族化が進みつつあるとはいえ、まだまだ大家族という家族形態が残っている。親と同居した子ども世代が生活費を一部負担するのは当たり前だし、親を老人ホームに入れるのは「子どもの恥」という考えも根強い。

また年金制度も整備されている。今の中高年世代は公務員や国有企業に勤め上げた人も多いが、そうしたケースでは北京市だと月7000元(約11万円)程度は支給される。中国の平均的な大卒初任給と同等か、ちょっと上ぐらいの金額である。夫婦2人ならばその倍になるので、日常生活にはさほど困らない。

高層ビルが立ち並ぶ北京市[Photo by gettyimages]
 

何より大きいのが不動産資産だ。マンションの価格は右肩上がりなので、若い時に不動産を購入していた世帯はかなりの資産となっている。中国にはこんな笑い話がある。

「北京市出身のある男は立身出世を誓って、米国への渡航を決めた。自宅を売り払った金を元手に米国で事業を起こし、一心不乱に働いてちょっとした財産を築いた。アメリカンドリームだ。年老いた男は老後を故郷で過ごそうと、北京に戻りかつての家を買い戻そうとしたが、米国で築いた全財産をつぎこんでも足りなかった」

マンションさえ買っておけば、老後の資産形成はばっちりというわけだ。地価が低迷する「失われた30年」を生きる日本人とはこの点でも感覚が違っている。

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