究極の精度に挑む!「秒」の定義を書き換える「光格子時計」とは何か

「物理定数」は本当に一定不変?
中川 隆夫, ブルーバックス編集部

そんなに高精度にしてなんの役に立つの?

しかし、そもそもこれだけ精度の高い時計をなぜ、さらに高精度にする必要があるのだろうか?

「じつは、セシウム原子時計を採用するときも、同じようにいわれていました。そんなに高精度にしてなんの役に立つの、と。

時計はもともと、天体の動きと同調して時間を測ることができれば事足りていたのです。しかし、より精度の高い時計ができることによって、新しい技術が発達してきました。たとえば、カーナビなどで位置情報を正確に測れるのは、セシウム原子時計が人工衛星に積まれているからです。地上の誤差数十センチという精度は、セシウム原子時計がなければ実現しません。

【写真】カーナビカーナビで位置情報を正確に測れるのは、人工衛星に積まれているセシウム原子時計のおかげ photo by gettyimages

セシウム原子時計ができたときには、誰もこんな使い方ができるとは考えていなかった。光格子時計が実用化された10年後には、いまでは想像もつかない、あっと驚くような技術が出てくるかもしれませんよ」(赤松さん)

で、光格子時計とは?

そのセシウム原子時計を2ケタ上回る精度の「光格子時計」とは、どのような時計なのでしょう?

「光格子時計の原理は、2001年に香取秀俊さん(現・東京大学教授)が提案し、2005年に実現させました。産総研でもこの技術をもとに、実用化に向けた研究をおこなっています。

光=電磁波というのは、電磁場の振動です。この光の電磁場の振動数を数えようというのが、光格子時計の基本的な考え方です。レーザー光を使って格子状の"器"を用意し、そこに計測する原子を孤立させることで振動数を測りやすくしているのです。

香取さんのすごいところは、一度に1000個の原子を格子状の"器"の中に入れて計測の時間を縮めていること。単一イオン時計という時間標準争いのライバルは、文字どおり1個のイオンを計測するため、光格子時計より効率が悪いのです」(赤松さん)

そこらじゅうを飛び回って動く原子を、格子状の"器"に閉じ込めるポイントは、香取さんが発見した「魔法波長」のレーザー光だという。

「通常なら、数百ミリワットのレーザー光を原子に当てると、原子の状態が変わるはずなのですが、魔法波長のレーザー光を当てると影響を受けないのです。原子にとっては、捕まっているのに何も感じていないかのような状態で、私たち観察者はこの間に、原子を計測できるということになります」(赤松さん)

話を聞いているうちに、光格子時計の装置がどのようなものなのか、実際に見てみたくなってきた。ちょっと見せてもらえますか?

関連記事