究極の精度に挑む!「秒」の定義を書き換える「光格子時計」とは何か

「物理定数」は本当に一定不変?
中川 隆夫, ブルーバックス編集部

まる一部屋を占める巨大時計

「いま稼働中なので、慎重にお願いします」と注意を促されて見た装置は、想像以上に巨大なものだった。

【写真】光格子時計光格子時計

部屋いっぱいに電子機器が並んでいる。どの部分が時計なのでしょう?

「ここは70m2くらいの広さがあるのですが、この部屋に収められた装置全体が時計です。まだ実験ベースなので、大きさは考慮せずにつくっています。みなさんが腕につけている時計よりもきわめて繊細で弱いもので、振動や音にさえ影響を受けてしまいます。以前の世代の時計は、2〜3時間しかもちませんでした」(赤松さん)

えっ? たったの2〜3時間で止まるのですか……。

「時計そのものがほとんど自作のようなものですから、機械のクセみたいなものがあります。それらを克服しながら、2019年10月から2020年3月にかけて、稼働率80%以上という世界最高水準の安定運転に成功しました。光格子時計がいよいよ、実際に使える段階にまできたと考えています」(小林さん)

夜中に叩き起こされて

なかなか気難しい時計ですね……。

「最初は、研究室に人がいるときしか動かしていませんでした。とにかく、すぐに止まるからです。でも、じつは人って結構音を出すもので、本を読んでいてもちょっと足が机に当たったりすると……、もう止まっていたり(笑)」(赤松さん)

【写真】光格子時計の部分きわめて繊細で、振動や音にも影響を受ける

「堅牢にしたうえで、装置のクセを見抜きながら長時間の運転にこぎ着けていきました。意外と大きかったのは、止まったときにメールで関係者に知らせるしくみを構築したこと。帰宅後も動かすようになって、夜中に止まるとメールが来て、いちばん近い関係者が調整にいく。週に2回ぐらいは夜中にメールが来るんですよ(苦笑)」(小林さん)

なんだか手のかかる成長期の子供みたい(笑)。

「自動復旧する機能も、取り入れてはいるんです。でも、なにしろ精度が高いので、装置をピタッと戻すには人の力が欠かせない。ただし、当然ながら、戻れば正確に時を刻む時計です」(赤松さん)

2009年にイッテルビウム光格子時計の開発に成功し、10年をかけて実用化のメドをつけたその先には、時間の単位である「秒の定義」を改定する動きがある。

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