子どもはみんな知っている「守られる機関」の存在

『Bris』って何?と思われた方も多いだろう。

日本では馴染みがないこの『Bris(Barnens rätt i samhället)』とは、日本語にすると「社会における子どもたちの権利」「子どもの権利協会」などと訳される。1971年の設立され、児童虐待(身体的虐待や性的虐待、ネグレスト、心理的虐待)など子どもや親たちから様々な相談を受け付けてきた。今では、電話相談のみならず、メール、チャットでも完全無料、完全匿名で相談を受け、必要があれば対応してくれる機関につなげる役割も果たしている。

児童虐待などを相談したい場合、いきなり公的施設、サービス、ましてや警察などへのアクセスは難しい。また、そもそもどの窓口が対応してくれるのか、どこに相談すればいいのかわからないという場合も、ひとまずBrisに相談すればそこからなんとかなる、という体制づくりをしている。

以前、日本が緊急事態宣言中だった5月11日に、コロナ禍における子ども専用の政府記者会見がスウェーデン政府主催で行われたことを以前記事にした。そのときにも、子どもが頼れる相談先、そして子どもの権利を代弁する存在として、大臣や公衆衛生庁の担当者と共に登壇し、コロナ禍で子どもに生じている疑問や不安に関して丁寧に回答していた。

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困っても逃げ込める場所がない……

それだけでなくBrisは、1979年に行われた体罰を全面的に禁止する両親法の改正を皮切りに、子どもの権利をより確実に守れる社会を目指し、毎年出されるレポートをはじめ、寄せられる声をもとに政策提言も行なっている。。

スウェーデンでは幼稚園生の頃から「困ったことがあればBrisへ」と繰り返し伝えられ、子供から大人まで、スウェーデンに住んでいれば誰もが知っている機関なのだ。学校での暴力はもちろん、家庭内の暴力に対しても、『Bris』の存在があることで、誰もが声を上げることができるのだ。

そういったベースがある中で出てきたのが、「何してるんですか! 子どもを叩くなんて許されないです、Brisに訴えますよ!」の一言だ。
この一言に、私はグッときた。

昔現在人権を重んじる国でも、昔は体罰が行われていた。これは1851年のイギリスのイラストだが、教師は鞭を持って描かれるのが主流だ。イラスト/Getty Images

多くの人がそうであるように、私も日本で過ごした学生時代、自分や周りの友人に、痴漢、体罰、虐待、教師による職権濫用など、大人への信用と自分の生きる世界への安全感を失うような場面に、たびたび遭遇してきた。その度、どこかに相談する、訴えるどころか、「いや、それはおかしい」と思うことすらできぬまま、「相手大人だし対抗のしようはない。でも、この世界、苦しい……」と諦めた。そう自分に言い聞かせ唇を噛むだけだった。

もし、何かあった時、ひとまずそこに連絡すればどうにかなる、それに今自分の状況はすぐには変わらなくても、政治にも自分たちの現状を届けてくれる、そう思える場所があったなら、どんなによかっただろう。