「元からスウェーデンが進んでいた」わけではない

また、スウェーデンで大ヒットし、最近ではNetflixにも登場しているスウェーデンドラマ『ボーナスファミリー』にもグッときたシーンがあった。

スウェーデンでは、再婚相手の連れ子などの関係で増える家族をボーナスファミリーと呼ぶ。そんな家族模様を描く人気ドラマ。画像/『Bonus Family』サイト(Sveriges Television)より

ドラマの中で、母親が初めて彼氏を持った娘に動揺しつつも、性的同意や避妊の重要性を伝えるシーンがある。そこで娘は、「ユースクリニックに行ってるから大丈夫」と告げるのだ

『ユースクリニック』に関しても、以前記事で紹介させていただいたことがある。東京より人口の少ないスウェーデン全土に250箇所以上存在し、友人や家族関係の悩みに対するカウンセリングから、避妊具提供や性感染症の検査、摂食障害対応など、およそ13-25歳までの若者が抱える幅広い悩みに無料、安価に対応する機関だ。

大抵学校単位で訪問するため、こちらもスウェーデンに住んでいれば誰もが知っている機関といって過言ではなく、若者の性と生殖に関する健康と権利を守る上で非常に重要な施設となっている。すなわち、子どもたちに「自分を大切に」と呼びかけるだけでなく、実際にそれをアクションに起こすための環境が、きちんと用意されているのだ。

こういった機関が自然にドラマに出てくることにも驚くが、それだけスウェーデンではこういった公的サービスへのアクセスが身近であることを示してもいる。そして、ドラマの中でごくごく普通の描かれることで、多くの人にその場所を知ってもらえ助けになり、また、「誰でも使っていいんだよ」というメッセージを発する重要な機会になると思いうのだ。

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もちろん、日本でも貧困や虐待をテーマにしたドラマは存在する。でも、普通に「ちょっと相談に言ってくる」と言ったシーンは相談する場所もないので描かれることはやっぱりまだ少ない。100年前、スウェーデンでも虐待や性犯罪は当たり前のように存在したし、現在も残念ながらそれらがなくなることはない。それでも、法律で禁止することで体罰や同意のない性行為が許されない社会の雰囲気を作ってきたし、それだけでなく、そういった事態があってもそこからまた自分の健康、権利を最大限守れるような仕組みづくりをしてきた。

今日本ではTwitterで「#若者が無料でいられる場所教えて」というタグも立ち上がっている。クリスマス、年末年始のこの時期、学校も公的機関も休みになり、家庭内暴力をはじめ、家庭内で困難を抱える子どもたちは、例年非常に厳しい状況に置かれる。さらに、新型コロナで世の中も不安定な中、一層苦しい環境下にいる子どももいるだろうし、社会のセーフティーネットが圧倒的に足りない中、その先で搾取などに遭いやすい場に辿り着いてしまう子ども、若者も少なくない

コロナ禍のクリスマス。寒空の中、今夜の居場所を探す若者たちもいる日本……。photo/Getty Images

新たに迎える2021年、新型コロナの影響もあり、家庭内暴力はじめ様々な困難に直面する人が今後一層増えるかもしれない。そんな今だからこそ、一人一人が自分の権利を実践できる環境を実現できるには何ができるのか、誰も取り残さない社会のあり方について、今改めて見つめ直すことが必要なのではないだろうか?

近い将来、日本のドラマでも「相談してきたから大丈夫」というセリフが普通に出てくることを願ってやまないのだ