何が起きていたのか…“官邸の守護神”の定年延長問題が与えた「大きな衝撃」

『安倍・菅政権vs.検察庁』(2)
村山 治 プロフィール

黒川の勤務延長は、国家公務員法81条の3「その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で引き続いて勤務させることができる」に沿って決定された。

東京高検検事長は、東京高検管内の検察事務を取り仕切る。中でも、重視されるのが、東京地検特捜部が捜査する重要事件の捜査や公判の指揮だ。当時、特捜部は、IR事業をめぐり、中国企業から376万円の賄賂を受け取った収賄容疑で衆院議員の秋元司を起訴し、追起訴に向けた捜査を続行中だった。その関連で外資系の大手カジノ業者の東京の拠点も捜索していた。

19年の暮れには、金融商品取引法違反(有価証券虚偽記載)や特別背任の罪で特捜部が起訴し、保釈中だった前日産自動車会長、カルロス・ゴーンがレバノンに逃亡。その身柄確保に向けた捜査にも傾注していた。

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ゴーンから米国在住の親族に「日産マネー」が流れた疑いも浮上していた。IR事業をめぐる大手カジノ業者のカネの流れの解明も含め、米司法省に捜査協力をあおぐ必要があった。黒川は、法務省勤務を通じて米司法省の事情に詳しく、知己も豊富だった。

とはいえ、それらの捜査や外交折衝は黒川でなくてもできなくはない。勤務延長の本当の狙いが検事総長昇格に向けた「待機」であることは明白だった。森が述べた「業務遂行上の必要」との説明は、のちに、国会で「黒川でなければいけない検察業務などない」と追及を受けることになる。

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