差別は「無知」と「恐怖」から生まれる
かつて、デンマークでもアフリカ人を奴隷として購入し、過酷な労働下で働かせるという奴隷売買が行われていた。1792年に可決された黒人奴隷廃止法案により、1803年に奴隷売買は廃止されたが、その後も黒人差別は根強く残ったということなのだろう。
クリスティーネさんに「差別はどこから生まれると思うか」と尋ねてみた。
「差別する人の多くは、黒人との個人的な付き合いがない人、あるいは黒人に仕事を取られてしまうと心配する社会的弱者だったと思います。そう考えると、やはり『無知』と『恐怖』から差別が生じるのではないでしょうか」(クリスティーネさん)
デンマークでは、黒人差別に反対する人々が立ち上がり、何度もデモが行われてきた。ブラック・ライブズ・マターが注目された今夏にも、コペンハーゲンでデモが開催された。
「デモによって黒人差別が話題になれば、自然と人々の差別に対する意識が高まり、ディスカッションが生まれます。黒人差別の話題が『タブーではなくなること』が根絶への第一歩。周囲の人と差別について語り合うこと、黒人との関わり合いを持つことで、人々の意識が変わり、意識的な差別のみならず、無意識に行われている多くの差別も減るはずです」(クリスティーネさん)
2020年、デンマーク国内でクリスティーネさんが白人から差別されることは一切なくなった。現在30歳のビクターさんは「母のことで差別された経験はない」と話しており、1990年代から徐々にデンマーク内の黒人差別が改善されていったことが予想される。それでもなお、アラビア系の移民の一部からは、黒人を下に見るような発言をされることがあるそうだ。
日本では、ここのところ「差別」や「ジェンダー」にまつわるWEB記事や企業のツイートが炎上するケースが多く見られる。その批判内容は「社会的弱者を下に見ている」「女性を性的に消費している」といったもの。これこそ、無意識の差別の一例であり、炎上して大きな話題になることで、人々の意識に変化が生まれているように感じる。クリスティーネさんが言うように差別の話題をタブー視せず、むしろ積極的にディスカッションすることが、今の日本では必要なことかもしれない。
編集/大森奈奈
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