ライトノベルは2010年代初頭から小説投稿サイト「小説家になろう」発のウェブ小説や、ニコニコ動画上で流行したボーカロイド楽曲を原作にしたボカロ小説を書籍化し、ウェブ発コンテンツからヒット作を生み出してきた。
2010年代末~2020年代初頭においても新たな鉱脈探しは止まっていない。
ここではあまりうまくいかなかったVTuber小説と、ムーブメントに発達する可能性を持つ「マンガ動画」ノベライズを対比させながら、同じYouTube発でも小説に向くものと向かないものの違いは何かを考えてみたい。
続かなかった「VTuber小説」
2019年4月に、VTuber小説は2冊同時に刊行された。
バーチャルYouTuberまたはVTuberとは、セルルック(2Dアニメ風)3DCGや2Dイラストで構成されたキャラクターの外見をまとい、「生徒会長で美術部員」といった基本設定を持つ、YouTubeや各種生放送配信サービスで活動する人々のことである。
ざっくり言えば「見た目を3DCGにして演じているYouTuber」とでも理解しておけばいいだろう。
VTuberは、YouTubeアカウントの登録者数が288万人を超えるキズナアイを筆頭に無数に存在し、人気VTuberの所属する事務所(プロダクション)も複数ある。
その中でもホロライブ所属のVTuberたちが登場する小説が、カバー株式会社 (原著, 企画・原案), 兎月 竜之介 (著)『ときのそら バーチャルアイドルだけど応援してくれますか?』として、また、.live所属者たちが登場する小説が .LIVE (原著, 企画・原案), 姫ノ木あく (著) 『電脳少女シロとアイドル部の清楚な日常 目指せ学園祭大成功!』として世に出た。
これらは、VTuberが話題だと知った角川歴彦が直々に「VTuber小説をやれ!」と編集長クラスにハッパをかけて始動したものだという(この話は複数のKADOKAWAの人間から聞いた)。
ただ、角川会長がどれだけ見通していたのかはわからないが、VTuberを小説化し、作品として成功させるのはアニメのノベライズと比べてはるかに難しかった。