「電商」はダマせない
結局、佐藤さんは2015年から2018年の間にメルカリと他のフリマアプリの2ヵ所で稼いだ480万円の利益に対して所得税が課されることになった。
本来なら20%の無申告加算税で済むはずだったが、税務調査がアダとなり、40%の重加算税という厳しい処分が下される。佐藤さんは夫と相談し、泣く泣く定期預金を取り崩し、192万円もの追徴課税を支払うことになった。
ここまで見てきて、それでもまだ「たくさんの人がメルカリで稼いでいるわけだし、自分ひとりくらいならバレないだろう」と考える人がいるかもしれない。しかし、それは違う。証拠はすでにバッチリ国税に睨まれているのだ。元国税調査官の松嶋洋氏が語る。
「一部の国税局にはメルカリなどの電子商取引の調査に長けた、通称 ”電商” と呼ばれる専門チームが存在します。また現場レベルの税務署にもITに強い『情報技術専門官』と呼ばれるプロフェッショナルたちがいます」
電商と情報技術専門官は厳格かつ、半年以上かけて調査を行う執拗さも兼ね備えているという。より悪質な無申告者に対しては、両者が連携し、摘発に動くこともある。松嶋氏が続ける。
「電商は『KSK(国税総合管理)』というシステムも活用します。ここには、全国の納税者が過去にどういう口座を持ったか、いつ高額な資産を受け取ったかなどの膨大な財産情報が蓄積されています。
国税がメルカリの売り上げのような個人の細かい記録まで収集している可能性も否定できません。もし、そうした情報に不審な点があれば、瞬時にKSKで調べ上げ、税務調査に動けるのです」
メルカリを利用していただけなのに、突然、家に税務署がやってきて、コツコツ稼いできた利益が一瞬にしてパーになってしまう時代が、とっくに来ている。2月から始まる確定申告をくれぐれもお忘れなきように。
『週刊現代』2020年12月26日・2021年1月2日号より