……あっさりともみ消す
ところが、当日配布された手紙の当該部分はこう変わっている。
「こうした中で、当方から本日の会議で養父市の成功を直接お伝えしたいと考えたのですが、会議時間の都合上叶いませんでした。事務局の置かれている立場は理解できないこともありませんが、日本農業の将来を考え規制改革に全力を尽くしている養父市長としては、とても残念でなりません」
内閣府の事務方が市長の出席を断ったという点や、「単に規制官庁に同調するだけ」という内閣府批判はすっぽり抜け落ちている。関係者によると、内閣府の事務方が激怒し、恫喝まがいの剣幕で文章の修正を迫ったのだという。
「単に規制官庁に同調するだけ」という批判が間違いだというのなら、内閣府が修正させたのも分からないではない。だが、規制改革を進める立場のはずの内閣府は、規制官庁、この場合は農林水産省を向いているのは明らかだ。
政府のホームページには、養父市長の手紙と共に、農林水産省が提出した「国家戦略特区における企業の農地所有特例(養父市)について」という1枚の資料が掲載されている。
当初は養父市長の「修正された」手紙だけが配布資料として準備されていたが、それでは養父市は成功しているということを印象付けることになると思ったのだろう。内閣府の事務方が農水省に促して「養父モデルは失敗」と印象付ける資料を作らせたというのだ。まさに規制官庁に同調している証ではないか。
もっとも、その内容は反論になっていない。
特例の導入前から16社が農地をリースする形で農業に参入していた。特例が認められた後はそのうち4社が農地を取得し、さらに7社が新規参入したが、農地を取得したのは2社だけ。合計6社が所有する農地は1.6ヘクタールで6社が経営する農地の7%に過ぎず、残りはリース方式だ、というのである。会議の場でも「リースかどうかは関係ない」という批判の声が上がった。