新型コロナ感染拡大で外出を控える日常が続くと、普段に増して気になるのが、お隣さんとの関係だ。日頃は良好なお付き合いをしているつもりでも、何がきっかけで、表面からうかがい知れない感情が爆発し、とんでもない紛争に発展するかわからない。メンタル不調の診療経験が豊富な医師・梅谷薫氏の著書『ゆがんだ正義感で他人を支配しようとする人』から、信じられないような出来事を2回にわたってご紹介しよう。何に対してどう備えたらいいかがよくわかるはずだ。
ご近所さんが「危険な隣人」化するとき
マンションや戸建てでの「ご近所トラブル」は絶えることがない。「ピアノの音がうるさい」「犬の鳴き声、子どもたちの叫び声で眠れない」「隣人が変な噂を触れ回っている」等々。一時的な誤解や感情的な葛藤くらいなら、マンションの総会で話し合ったり、近所の顔役が間に入って仲裁してくれることもある。だが中には、理性的な話し合いやコミュニケーションがどうしても通じない人たちがいる。
Dさんは郊外の高級マンションに暮らしている、会社経営者の女性。いつもは花粉症や、人間ドックの結果の相談でたまに来院するくらいの元気で明るい人である。
ところがこの年の秋、大型台風が来襲し、大雨のためにDさんの自宅、家財が水浸しになってしまった。愛用している家具や部屋が被害を受け、Dさんは大きなショックを受けた。やむをえず、家財の買い替えや床や壁の補修をして、水漏れ部分の工事も依頼したため、急な出費がかさむこととなった。

Dさん自身は家財保険に入っていたし、マンションも災害時の保険に加入していたので、保険金はどうにか下りることになった。「手続きをしてもらえれば、すぐに保険金を振り込みます」との連絡を受けて、Dさんはようやくホッとした気持ちになった。だが、ここから問題が発生したのだ。
マンションの管理組合の理事長は、区役所に勤務する実務家タイプの人。今度のことでも、てきぱきと手続きを進めてくれるに違いない。Dさんはそう期待していた。ところが、組合を通じて保険会社に提出する書類の段階で話が進まなくなった。