「生意気な女」に向けられる「危険な隣人」の妬みがこんなトラブルに

ゆがんだ正義感で他人を支配する人2

不安と恐怖で食事がのどを通らない

噂話だから、誰が言い出したのかはわからない。でもその話を耳にしたDさんは、当然のことながら大きなショックを受けた。裏で何を言われているかわからないと、不安と恐怖でいっぱいになったのだ。毎日気持ちが落ち着かない。夜は眠りが浅くてすぐに目が覚めてしまう。気持ちがふさいで、食事がのどを通らない。Dさんはみるみるやせ細り、体重があっという間に三十キロ台まで落ちてしまった。

Dさんの話のあと、しばらくの沈黙があった。

「そうですか。本当に大変でしたね」
「ええ。主人もそれを聞いて、たいそう腹を立てていました。冗談じゃない! 噂話にしたって限度があるって。でも、噂の出どころなんて特定できるわけがありません。私も犯人捜しをしてもしかたがないので、聞かなかったことにしています。人の悪意ほど、恐ろしいものはないんですね……」

Dさんはさびしそうに微笑んだ。

いきなりの法的措置

Dさんが久しぶりに顔を見せたので、その後の様子を伺った。「実は、あれからも大変だったんです」とDさん。

Dさんは体調を崩してしばらく実家で寝込んでいたため、その後、管理組合の総会で決まった管理費の値上げや修繕費の拠出金について、何も知らない状態になっていた。本来ならこのような重要書類は、間違いのないように各戸に郵送で届けるのが通例だ。理事長はその手間を省いたのか、あるいは多少の悪意でもあったのか、切手も貼らずに封筒に入れてDさん宅の郵便受けに投函したらしい。あとで聞くと、Dさんの経営する会社の社員が、単なるダイレクトメールと思って破棄してしまったようだった。

ある日、理事長からDさん宛に「内容証明」が届いた。「総会決定についてこれまで何度も通知しましたが、必要な分担金を払おうとしないのはきわめて遺憾に存じます。ついては、『少額訴訟』の手続きによって、Dさんを法的に訴え、裁判所においてどちらが正しいかの判定を受けていただくことといたします」

Dさん夫婦にとってはまさに「寝耳に水」! 法的措置とは、自分たちを犯罪者扱いするつもりなのだろうか?

  • 『成熟とともに限りある時を生きる』ドミニック・ローホー
  • 『世界で最初に飢えるのは日本』鈴木宣弘
  • 『志望校選びの参考書』矢野耕平
  • 『魚は数をかぞえられるか』バターワース
  • 『神々の復讐』中山茂大