目に見える変化
昨年4月以来となる緊急事態宣言の発出で、再びテレワークが脚光を浴びている。言うまでもなく、コロナ禍がもたらした「目に見える変化」の代表格だ。
もちろん順調に普及しているわけではない。導入してみたものの、能率が悪くて再びオフィスに出社して働くという旧スタイルに戻した企業は少なくはない。顧客の要望や取引先企業の都合で、テレワークに切り替えたくとも出来なくなった職場もある。

NIRA総合研究開発機構などの「第2回テレワークに関する就業者実態調査報告書」によれば、テレワークの平均利用率は前回の緊急事態宣言下にあった2020年4~5月は25%だったが、6月には17%に下落した。
一方で、大企業を中心にテレワークの導入に積極的なところは多い。国土交通省の上場企業向けアンケート調査(8~9月)によれば、18%が「拡大する」、53%が「同程度を維持する」と回答している。今回の緊急事態宣言を受けて、取り組みをさらに強化している企業も増えている。
テレワークは能力が見え易い
国交省の資料が、企業が考えるテレワークのメリットを紹介している。
トップは「従業員のワーク・ライフ・バランスが改善する」(79%)だが、「業務の効率化・無駄な仕事の削減につながる」(64%)、「従業員が自己管理の習慣をつける機会になる」(35%)、「生産性の高い仕事に集中することになる」(34%)といった理由が上位に並んでいる。
導入に熱心な企業は、感染防止対策という消極的な理由ではなく、むしろ社員個々の労働生産性を向上させる手段の一つとして位置づけているのだ。テレワークは、社員個々の仕事に対する姿勢や能力が見え易いためである。

例えば、オフィスに集まって仕事をするのが常識だった「コロナ前」は、仕事を進める上でのアドバイスを上司や同僚に求め易かった。ベテラン社員が慣れないパソコン操作や面倒な作業を若手社員に押し付けるといった場面も少なくなかった。
仕事が遅い人を部署全体でバックアップするため、仕事を早く終わらせる人に「しわ寄せ」が行くという理不尽もあった。それどころか、仕事が遅いほど会社に居る時間が長くなるので、残業代が多くなり得をするといった〈不合理〉が生じていた。
これに対してテレワークは、各自が時間をコントロールして働くため、机を並べて働いていたときのように、周囲の手助けやアドバイスを求めることは難しい。与えられた仕事を「時間内」に仕上げることを求められるので、ダラダラと作業をする人は評価を下げる。
オンライン会議では要領よく発言しないと伝わりづらいため、プレゼンテーション力が問われることとなる。発言を求められる機会も、対面の会議より多くなりがちだ。