お子さんたちは小さいころから成績もよく、2人ともストレートで希望する有名大学に入学しました。子育て中に知り合った友達や近所の人からも、生活に余裕があり、子どもたちが優秀なことなどをうらやましがられる機会が多く、佐藤さん夫婦は生活についても、子育てについても「完璧」なものだと思っていました。
そんな幸せに見えた佐藤さん夫婦の唯一の不満は、息子たちが結婚していなかったこと。活動的だった真一さんは、20代から30代のはじめまでは、付き合っていた女性がいたようでしたが、いつの間にか交際は途絶えていました。人付き合いが苦手な裕和さんは、そもそも女性と付き合ったことすらないかもしれません。
老後生活に入って、時間を持て余すようになった佐藤さん夫婦は、「早く結婚して、孫の顔を見せてほしい」と、息子たちに結婚をうながしていました。しかし婚活パーティーの情報を調べてどれだけ勧めても、2人ともそのようなイベントには参加しませんでした。
息子たちが結婚して、3世帯で孫と賑やかに暮らすことを夢見ていた佐藤さん夫婦ですが、今では賑やかな暮らしどころか、ずっと自宅にいる息子たちの生活音を聞いて、ビクビクしながらその日の彼らのご機嫌をうかがう毎日を送っています。
近所の目を避けるような生活
息子さん2人が自宅にひきこもるようになって、すでに3年が経ちました。佐藤さん夫婦が今、細心の注意を払っているのは、近所の人やアパートの住人に、息子たちが働いていない事実を知られないようにすること。息子たちが仕事を辞めた後は、佐藤さん夫婦も極力外出を控えるようになりました。アパートの住人や近所の人と会って、息子たちの近況を聞かれたくないからです。