「共同養育」という選択

離婚調停はだらだらと続き、そろそろ3年目に入ろうとしていた。そもそも離婚調停は、多くても月に1回ほどのペースで、進行が遅い。相手のここがいやだった、あそこがいやだった、と調書を交わし合うだけの期間が長く、建設的な話し合いに進むまでに時間がかかる。

当初の怒りが少しずつ冷え、元夫の気持ちを慮る余裕が出てきた奈緒美さんだったが、子どものことが心配で、なかなか離婚を決断できずにいた。
「この先、子どもを私一人でどうやって育てていこうって、その不安が大きかったんです」

とはいえ、離婚はもはや時間の問題となってきた。別居期間が長ければ、夫婦関係は破綻しているとして離婚が成立してしまう。

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奈緒美さんは、少しでも情報収集をしようとネットを開いた。「離婚」「子ども」などとワードを入れて検索するうち、出合ったのが「共同養育」という言葉だった。

「離婚をしても二人で子どもを育てる選択肢があると気づいて、まるで羽が生えたみたいに気持ちが軽くなりました。私たち、二人とも経済的には自立しているし、子育てさえ共同でできるなら、あとは何も障害がないんです。メンタル的にもお互い『この人がいないと生きていけない』という関係じゃなかったし。それで、彼に『共同養育』を提案してみたんです」

子煩悩な元夫にとって、奈緒美さんの提案は渡りに舟だった。元夫もまた、離婚によって子どもとの関係が切れることを恐れていたのだ。
親権や監護権は奈緒美さんがもつが、元夫と子どもは好きなだけ交流できること、学校行事等の参加も自由にできること、成績表等子どもの情報は共有すること、長期の休みには元夫側の親戚の家に泊まりがけでいくこと等、「共同養育」を柱にかなり細かく取り決めた和解調書を作成し、円満に離婚が成立した。

それから3年。奈緒美さんと元夫は、子どもをはさんでのよい関係を築けている。夫婦ではなく他人になったことで、互いにお礼を言い合うようになったこともよいのかもしれない。
「月に何回か子どもは父親に会っていますが、そのときは子どもの希望に応じて、高尾山に登ったり、ダイビングをしたり、ちょっとハードなアスレチックに行ったりなど、私にはできないアクテビティをしてくれるので助かっています。子どもは父親が大好き。会って楽しそうにしている子どもを見るのは、私もうれしいんです」

ひとり親家庭で育つことは、子どもにとって大きなリスクだ。どんなに経済的、精神的に自立している親であっても、職を失可能性はゼロではないし、病気にかかったり、死んでしまったりすることも起こり得る。そんなとき、もう一人頼れる親がいることは大切だ、と奈緒美さんは言う。
「離婚でひとり親家庭になったとしても、もう一人の親と子どもとの関係は存続でいる方がいいと思うんです。そうすれば『私が死んでしまったらこの子はどうなるの』と思わずにすみますから」

離婚しても親子は親子。互いに「親」として協力的な関係が築けたら、子どもにとってもいいはずだ(写真の人物は本文とは関係ありません)Photo by iStock