「世界の工場」の面目躍如
日本人の中には、中国のイベント「ダブルイレブン」を引き合いに出して「日本製品は今も人気がある」と反論する人もいるかもしれないが、日本製品を好んで買っている中心層は、それよりやや上の世代であり、売れているのはベビー用品や美容器具、日用品などだ。消費意欲が非常に旺盛だと言われているZ世代がふだん買っているのは、アパレル、食品、自分の趣味のものなどで、前回のガチャガチャの記事でも書いた通り、こだわりが非常に強いのが特徴だ。
SNSで自分が好きなインフルエンサーが薦めるものには興味を持つが、一般大衆向けの広告宣伝には目もくれない。自分がいいと思ったものなら、たとえ他人がいいと思わなくても、とことん好きになり、それを追求するというオタク的な精神と消費行動を取っているのだ。
そうした若者の傾向をキャッチし、商品化に成功しているのが、中国の新興メーカーの経営者たちだ。彼らの多くが20代~30代で、Z世代の年齢に近く、すでに豊かになった1990年代以降の中国で育っている。欧米への留学経験などもあり、世界のトレンドを常にネットでウォッチしているだけでなく、若者の心を掴むマーケティング方法なども熟知している。
また、品質という点では、かつて「世界の工場」だった中国のモノづくりの技術が物を言っているだろう。1990年代後半~2000年代前半、世界中の企業が中国に進出し、あらゆる製品を製造したノウハウが中国には蓄積されている。そのことも、今の中国製品の品質向上に寄与しているのではないかと感じる。
これらの理由により、今では日本人がうすうす思っている以上に、日本製品よりも中国製品が若者の支持を集めているのだが、これはひと昔前の中国人を知る日本人にとっては驚きだろう。何しろ、以前の中国人なら、自国の製品を選ぶどころか、中国製品に対してコンプレックスや強い不信感さえ抱いていたからだ。
そうしたコンプレックスや不信感は、私の印象では、少なくとも6~7年前でもまだかなりあったと思うが、それがこんなに短期間に、いとも簡単に払拭されるとは、中国をよく知る日本人には想像もできないことだったからだ。