前編はこちら→これは何かの冗談か? 映画『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』撮影中に起きた災難がヤバすぎる…
『未来世紀ブラジル』や『12モンキーズ』など、映画史に残る名作を世に送り出してきた映画監督のテリー・ギリアム。そんな監督が自らを「ドン・キホーテ」に重ね合わせて自らの集大成としてメガホンを取った映画『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』は、災難に見舞われたものの、並々ならぬ執念で企画から約30年後の2018年にやっと完成した。
しかし、同じように大御所と呼ばれる映画監督が人生の情熱を燃やしても、未完成のまま幻に終わることもある…。
未完成の超大作
二本目は『ホドロフスキーのDUNE』です。これはタイトルそのままですが、チリ出身の映画監督アレハンドロ・ホドロフスキーが『DUNE』という映画を作ろうとして、そして作れなかった顛末について、監督自らが出ずっぱりでひたすら語り倒す映画です。
ホドロフスキー監督は、日本ではあまり有名ではないかもしれません。主な代表作に『ホーリー・マウンテン』などがありますが、「知る人ぞ知る」とか「伝説のカルト映画監督」とか、そういう文脈で紹介されることが多いように思います。
キャリアは長く、1950年代から活躍しています(御年91歳!)。が、どちらかといえば寡作の監督で、1990年の『ホドロフスキーの虹泥棒』から2013年の『リアリティのダンス』の間、実に23年もの沈黙の期間もありました。
しかし彼の作品は、そのどれもが想像を超えるイマジネーションを伴った強烈なものとなっています。
では、この超個性派監督であるホドロフスキーが撮ろうとした映画とは、どのようなものだったのでしょうか?
『DUNE』は、アメリカの作家フランク・ハーバートによるSF文学の古典とも呼べる名作シリーズで、日本では『デューン 砂の惑星』という邦題で早川書房から翻訳本が出版されています。その名の通り、砂の惑星デューンを舞台に宇宙を支配する力を巡って壮大なドラマの描かれる作品です。
ホドロフスキー監督は懇意にしているフランスの映画プロデューサーから打診を受け、この作品を映像化することに決めました。曰く「プルーストに匹敵する偉大な文学作品」の映画脚本を苦心の末に書き上げると、彼は一緒に『DUNE』の映像化を実現するためのスタッフ——魂の戦士たちを探す決意をします。