『エヴァ』がTV放送から26年経っても、若者に「絶大な人気」を誇る理由

登場人物に、どうしても共感してしまう
溝部 宏二 プロフィール

精神科医の斎藤環は、現代の若者の人格特性を「承認の病」と見なしており、承認を得るために「キャラ」という役割を作り出すと考察して次のように述べている。

「キャラクターといっても、必ずしも『性格』を意味しない。『キャラ』は本質とは無関係な『役割』であり、ある人間関係やグループ内において、その個人の立ち位置を示す座標を示す」(斎藤環『承認をめぐる病』)

ここでいう「本質」とは、本人の内面に確立されたアイデンティティであるが、その一方でキャラは相対的な座標にしかすぎないのだから、付き合う相手により変化する。斎藤氏の述べるキャラ型の人々は、相手とつねに同じように付き合っていけるわけではなく、対人関係は不安定とならざるを得ない。

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現代の若者の人間関係では、人と人との「あいだ」にある関係性が、自己の本質であるアイデンティティより優先されていると考えられる。つまり、若者は相手により「キャラA」「キャラB」と使い分けるので、本人の本質(アイデンティティ)が見え難く、捉えどころがない。

もちろん、大人も対象に合わせてコミュニケーション方法を多少は変更(チューニング)するのであるが、互いに本質は一貫しているので、相手に「共感」してその本質を理解するのはあまり困難ではない。

一方キャラ型の人は、自我同一性の獲得に失敗した代償としてキャラを構築しているとも考えられるが、そもそもアイデンティティなどに拘っていないとも感じる。自分自身はバームクーヘンのように空虚であるが故に、あいだの人間関係の操作に熟達した者が「コミュ力」という現代の「魔法の杖」を手にして、アイデンティティに拘らず人間関係を構築できる。

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