教育の「そもそも」を問い直すことで、公教育の目指す形が見えてくる

最新刊の「はじめに」を全文特別公開!
山口 裕也 プロフィール

本書の留意点

私が、杉並区で公教育政策に携わるようになってから、早いもので、15年が経ちます。いわゆる「新自由主義—教育改革」が全盛だった2005(平成17)年、大学院の博士課程で心理学を専攻していた私は、とあるきっかけから、都内の中学校で相談室を手伝ったり、学校評議員をしたりしていました。そこでの縁で、当時、独自の学力調査を始めたばかりだった杉並区教育委員会から声がかかりました。

最初は、一回きりの分析のお手伝いと研修会の講師、あくまでボランティア。その後、杉並区立済美教育センターで継続的に調査に携わるようになり、気がつけば仕事の範囲は大きく広がって調査研究室長に。そうしてあっという間に月日は流れ、ここ5年ほどは、教育長付の主任研究員として、教育政策全般の企画や点検・評価を担いつつ、学校と地域への総合的な支援を担っています。

私がこれから示していく考え方は、「杉並」という土壌、そして、そこでこそ実現できた「教育委員会に常駐する研究職」という特異なポジションによって育まれたものです。しかし、ここで明記しておかなければならないのは、本書が、あくまでも私個人の考えや思いを述べるものだということです。杉並区教育委員会の公式の見解を記すわけではないことをご留意いただければと思います。

本書の構成

そのうえで、本論の構成上の特徴を述べておくと、私は、全5章を通じて、公教育政策の「全体」を「順序」よく記していくことを、一番に心がけました。

具体的には、第1章から第4章において、順に、「学びと成長」、その支えとなる「人材と組織」「施設・設備」、これら三つをすべての子どもに確実に届けるための「行財政」を話題にしています。

これらの話題は、これまで、別個に論じられることがほとんどでした。しかし、学びの在り方がその支えとなる人や場の在り方を、学びと人や場の在り方が行政の在り方を方向づけることは明らかです。ですから、公教育をよりよく変えるためには、やはり、これら四つの話題を、すべて関連づけながら論じていく必要があります。

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本論を読み進めていくに当たっては、これら四つの話題から成る「柱立て」を、いつも意識しておいてください。特に、第2章の話題は「社会」に、第3章の話題は「都市」に、第4章の話題は「政治」と「行政一般」にも広がっていきます。

その他にも、各章で言及する内容は多岐にわたりますから、読み進めていく過程で公教育政策の全体像を見失わないためにも、この柱立てが「生命線」になります。

また、本論は、第5章からお読みいただくこともできます。第1章から第4章までの振り返りを含み、全体をまとめるのが第5章だからです。

もちろん、基本的には、前から順に読み進めることをお勧めします。公教育政策・基礎自治体における義務教育政策について、「底板」から考えていく思考過程を順序よく追うことができるからです。

では、始めましょう。

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