テレ東「家、ついて行ってイイですか?」が令和の長寿番組に成り得るこれだけの理由

やさしい番組なのだ

放送開始から8年目を迎え

『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京、水曜午後9時)が昨年10月、人気に後押しされる形で放送時間が1時間から2時間に拡大された。放送開始から8年目。長寿番組と呼んでもおかしくないが、視聴者から飽きられる気配はない。

なぜ、観る側が飽きないかというと、この番組の主役が家を見せてくれる人たちだから。人の半生や個性は十人十色。同じ話はない。なので観る側は毎回、釘付けになる。

番組を企画した高橋弘樹氏(39)は以前から無名の人たちに強い興味を抱いていた。著書『TVディレクターの演出術』(ちくま新書)にもこう書いている。

「すでに有名なものや人物ではなく、まだ知られていない新たな物事の魅力を見つけたい、そして磨きたい」

テレビ東京『家、ついて行ってイイですか?』HPより

確かに、この番組では魅力的な無名の人たちが数多く紹介された。例えば昨年3月に登場した石川さん(69)と松本さん(53)も忘れがたい。

ファンキーなファッションの2人がスタッフと出会ったのは千葉駅前。建築現場で働く同僚同士で、相当飲んだ後らしく、上機嫌だった。

「コイツ、稼ぎがないから、パンの耳ばかりかじっている」(石川さん)
「(オレは石川さんに)メシ食わせろって言っているのに毎晩酒ばかり付き合わされる」(松本さん)

どちらも相手への言葉はきついが、大の仲良し。まるで兄弟のようだった。

ところが、カメラの前で飲み直していたスナックで衝突する。石川さんが「私はスーパーサイヤ人。それくらいの価値があると思う」と胸を張ると、松本さんが噛み付いた。

「人間の価値は能力とか知識じゃないんですよ。その存在自体に価値があるんです」

急に哲学者のようになった。その後も松本さんは石川さんに唯心論的な論争を吹っかけ続けた。ついに石川さんがブチ切れ、「帰れ」と声を荒げると、あっさり店を出る。

この間、松本さんはふっと流暢な中国語を口にした。博識で弁も立ったから、かなりのインテリであるのは間違いなかった。

 

ただし、まだ続きがあった。スタッフが店外まで追い掛けると、松本さんは思い出したように「1000円貸してもらえます?」。タクシー代にするのかと思いきや・・・。
「お菓子食べながら歩いて帰るから」

底なし沼のように深みのある人だった。やはり十人十色なのである。

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