その後、当該の発言は東京オリンピックの組織委員会のことを指しているわけではない、組織委員会は円満にいっているということを述べたうえで、
「次の大会まであと半年となりまして、関係者一同一生懸命頑張っておられます。そのなかで、その責任者である私が、みなさんのお仕事に支障になるようなことがあってはいけない、と考えてお詫びをして撤回をするということを申し上げたわけであります。世界のアスリートを受け入れる都民、国民、それからIOC、IPCはじめ国際的な関係者にとっても、オリンピック・パラリンピック精神に基づいた大会が開催できますように引き続き献身して努力していきたいと思っております。以上です」
と締めくくった。
もはや政治家による謝罪会見のお決まりのパターンとなっているが、森氏も、自身の発言がどのような意味で問題だったのか、何を問題と認識しているかを自分の言葉で具体的に説明することはなかった。そこには言及せずに「オリンピック・パラリンピック精神に反する」という抽象的な説明に終始するばかり。
女性を蔑視するような発言をした、偏見に基づいた発言をした、女性が登用されにくいこの社会においてその差別を容認・助長するような発言をした、しかも五輪の関係会議という公の場で、五輪の組織委員会会長、そして元総理という立場でありながら…といった説明が彼の口から出ることは一度もなかった。
別に「老害」を批判したいわけじゃない
冒頭の説明ののち、記者から質問が出たが、その回答も質問と噛み合っていないものや、何を批判されているのかについて本当に理解しているのか、と首を傾げざるを得ないものばかりだった。
「辞任は考えましたか?」という質問には、
「辞任は考えておりません。私は献身的にお手伝いして7年間やってきたわけですので、自分からどうしようという気持ちはありません。みなさんが邪魔だと言われれば、『老害』が粗大ゴミになったのかもしれませんから、そしたら掃いてもらえればいいんじゃないんですか」
と答えている。森氏の「老害」という言葉からは、自身が高齢であることを理由に批判されていると捉える被害者意識めいた思いがうかがえる。しかし、当たり前のことだが森氏が批判されているのは高齢だからではない。発言に問題があるから批判されているのだ。