最後に記者が「みなさん、今回の森さんの発言に怒ってるんですね」と言うと、森氏は「謙虚に受け止めておきます。だから、発言を撤回すると言っているんです」と言ったものの、明らかにいらだった様子で謙虚さはどこを探しても見当たらない。
以上で記者会見を終了させていただきます、という司会の発言とともに会見は幕を閉じた。森氏が登場してから退場するまで20分。「文句を言われたから仕方なく撤回してやっている」「でも本当はオレは悪くない」という思いがすけて見えるような会見だった。
注意すらできない日本政府
暗澹たる気持ちになるような会見だが、さらに大きな問題は、森氏に対して公の場で注意すらできない日本政府の人々なのではないか。
たとえば、加藤勝信官房長官は、2月4日の会見で、
「森会長の発言内容の詳細について承知していない」
「政府として具体的なコメントは避けたい」
と述べている。
日本政府はこのコロナ禍にあって東京オリンピック・パラリンピックを進めようとしている主体である。にもかかわらず、その政府が、五輪組織委員会会長が海外から強く批判をされるような発言をしたことについて言及すらしないのである。森氏の発言はもちろん、それを注意し批判することすらできない日本政府の態度は、国際的な信頼を貶める事態につながっていくことだろう。
「詳細を承知していない」などと言って言質を取られないよう逃げている場合ではない。政府の関係者が「自民党の大御所」に色目を使うことが、日本の国際的な信頼に優先してしまうことなど、決してあってはならない。