東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の発言はさまざまな波紋を呼んでいる。女性差別的な発言であったことは間違いないが、もう一点注目を集めているのが、「会議で意見を言うのは悪いことなのか?」ということだ。女性は優秀だから会議で意見をいう、だから理事会が長くなる、だから女性の理事を増やしたくない。その文脈を見るにつけても、「会議は意見を出すはずの場ではないのだろうか」と疑問を抱いた人も多いのではないだろうか。
週刊誌「アエラ」で初の女性編集長となり、退社後Bussiness insider Japanの統括編集長でもあったジャーナリストの浜田敬子さんが、自身の体験をもとに「会議に意見は必要ない」という背景を考察してくれた。
初めて部長会議に出た日の話
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の「女性が入っている会議は時間がかかる」発言を聞いた時、私の頭の中にはある光景が浮かんだ。それは2014年、週刊誌「アエラ」の編集長になったばかりの頃。編集長は部長級で、毎週木曜昼前に開かれる部長会という会議に参加することになっていた。
定例化している会議に初めて参加する時、その会議がどんな“お作法”のもとに進むのかわからず戸惑い、最初は様子見、といった経験は誰しもあるのではないだろうか。
その部長会は、最初10分ぐらい社長が話をし、その後各部長からの報告、という具合に進んでいた。私も最初は“空気を読んで”黙って聞いていたが、会議が終わろうとする頃、挙手して発言した。今ではその内容すら覚えていない。何かに異を唱えるというより、何か提案したか、質問したのだったと思う。その後、何人か発言する人が続いた。年度初めだったので、新しく部長になった人たちが次々手を挙げたと記憶している。

この会議はああいう発言する場所じゃないから
だが、会議が終わって部屋を出たところで、私は役員の1人に呼び止められ、こう言われた。
「あのさ、この会議はああいう発言をする場所じゃないから」
一瞬何を言われたのかわからなかったけれど、思い出した。そういえば、歴代編集長はいつも30分ぐらいで会議から戻ってきていたな、と。つまり部長会は社長の話、各部門報告でハイ終わり、何か課題や新しい提案を議論する場ではない、ということなんだと悟った。私はその役員に聞いた。
「じゃ、全社的な問題の議論や、他の部署についての提案や質問はどこでするんですか」
「それは個別に話してくれれば聞くよ」
せっかく週に1度全部長が集まるのに、そこで議論しない会議なんて何の意味があるんだろう。報告だけだったら、メールでいいのに。たまたま部長会が開かれる木曜日がアエラの校了日で超多忙だったこともあり、私は徐々に編集長代理に代理出席を頼むようになり、部長会から距離を置くようになった(そのことは、時々役員からチクチク言われた)。