“手料理が大事”という言葉に追いつめられて、料理をすることがしんどい。料理研究家のコウケンテツさんは、自身の講演会でそう告白する女性の声を聞いて、考えさせられたといいます。
コロナ禍で、さらにしんどくなっている人は少なくないでしょう。そんな「おうちごはんを作る人」の気持ちに寄り添い、コウさん自身の経験と対処法を記したのが、著書『本当はごはんを作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ』(ぴあ)です。
今回は同書の中から、洗い物を減らす方法と、コウさんおすすめの「大皿料理レシピ」を紹介します。
※本記事は、コウケンテツさんの著書『本当はごはんを作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ』(ぴあ)より一部を抜粋し、著者の許可のもと再構成したものです。
お茶碗をやめてみました
ただごはんを盛り付けるだけ、という単機能の器、それがお茶碗です(もともとはお茶を飲むための器らしいのですが)。
「お茶碗の1つでも洗い物を減らしたい!」
我が家は5人家族のため、食事のお皿の数は大変多いです。ごはんを盛る、それだけのためにお茶碗はすでに5つ必要。5つも洗わないといけない。そしてこう思ったのです。
「お茶碗は、使わなくてもいいのではないか」
こう言うと日本の文化、伝統うんぬん......そういった話になりそうですが、でも、
文化の伝承も大切だけど、それは自分に余裕があってこそなのではないかとも思うの
です。 この本で繰り返し言っておりますが、実体を伴わない思い込み、「こうしないといけない」に縛られて、しんどくなっているのであれば、それを手放す勇気が必要なのでは?
「ごはんはお茶碗に盛らないといけない」
これは思い込みではないかと、僕は思ったのです。料理を作るだけで、今は精一杯。 それ以上のことをやるとキャパオーバー。そういうSOSな事態なのですから、それ以外の教育、マナー、文化を教えるのは、後回しでよい状況なのだと思うことにしたのです。
そうしてある日、お茶碗をやめてみました。