1990年代頃から、浴室での死亡事故の多くは「ヒートショック」によるものだと考えられてきた。
寒い脱衣所にいた直後に風呂場で熱いシャワーを浴びたり、湯船に入ったりすることで血圧が急激に上がる。それに耐えきれずに心筋梗塞や脳梗塞を起こして死に至るのがヒートショックだ。
しかし、最近になって浴室での死亡事故の原因の大半はヒートショックではなく、熱中症なのではないかという見方が有力視されるようになってきた。
ジャーナリストの笹井恵里子氏が語る。
「厚生労働省は'12年10月から'13年3月にかけて、入浴関連事故についての調査を行っています。この調査結果をもとに東京歯科大学の鈴木昌教授らが行った推計によると、日本では年間、およそ2万人が入浴中に亡くなっていると考えられます。
一方で、千葉科学大学の黒木尚長教授の研究データから入浴中に体調不良になった人の84・2%が、その症状からして浴室熱中症だと推測されています。
こうしたことから、実際にはこの2万人の大半がヒートショックではなく、熱中症により亡くなった可能性が高いと思われるのです」