計27年間中学受験の世界に身を置く作者、矢野耕平が受験で後悔しない方法を伝授。塾の新学期は2月から…『令和の受験 保護者のための参考書』で保護者も中学受験を“正しく”理解しよう。毎日連載>これまでの連載はこちら!
入学後に伸びる子、転落する子
保護者がわが子に中学受験させるべきか否かを考え始めるとき、「わが子は果たして中学受験に向いているのか、あるいは向いていないのか」と悩んでしまうものです。
そこで、今日から4日間で「中学受験向きの子、不向きな子」とはそれぞれどういうタイプなのかを考察します。

この種の不安や悩みを保護者から耳にするときや、自塾の説明会に臨むとき、わたしは決まって次の話を紹介します。
神奈川県の有名男子進学校で教鞭を執る友人と食事をしていたとき、彼からこんな問いかけがありました。
「ウチの学校は偏差値70を超えるだけあって、入学当初の生徒たちは本当に優秀だよ。あの入試問題で合格点を上回ったのだから。でもね、毎年のことだけれど、中学校1年生の夏休み明けには、学力が『伸びる子』と『落ちる子』に二極分化する。どうしてそうなるのか? 両者の違いって分かる? ヒントは小学生のときの学習姿勢……いや、学習環境といってよいかもしれない」
わたしは即座に返答しました。なぜなら、彼だけではなく、数々の私立中高教員から同種の話を耳にしていたからです。
そのわたしの回答に彼は頷きました。
「そう、全くその通り。子どもベッタリの親は本当に困るんだよねえ」
彼が言いたいのはこういうことです。
保護者が子のスケジュール管理のみならず、教材の整理整頓、取り組んだ課題の丸つけや、ときには子に寄り添って解説をしてやる……。そんなふうに中学受験を「二人三脚」で乗り切ったようなご家庭の子は、中学入学後に学力が低迷するというのです。
一方、親はわが子の中学受験勉強から適度な距離を保ち、子どもが自ら学習にコツコツ励んでいる……そういうご家庭の子は中学入学以降にさらに学力を高めていくらしいのです。
「新御三家」と形容される世田谷区の男子進学校の先生が、わたしの塾の講演会に登壇した際、保護者に対して、「ちょっと過激」に感じられるこんな物言いをしていました。
「中学受験に挑む保護者の皆さんにお願いしたいことがあります。もしわが子の受験勉強にぴったり寄り添っているのなら、できれば入試までにはそのスタンスを変えてほしい。もしそれを変えられないというのなら、大学受験まで同様のスタンスを貫いてほしいのです。皆さんにその覚悟がありますか?」
2人の私立中高教員の話を挙げましたが、両者とも言わんとしていることは一致しています。子の学力的な成長を考えれば、親は「子離れ」すべきだというのです。