男性だけが「わかってない」わけじゃない

しかし、「わかっていない」のは男性だけとは限らない。実は出産前の筆者も「わかっていない」ひとりだった。

筆者が33歳で初めて妊娠したのは、結婚して4年半ほどした頃。月2回刊行している雑誌編集部に所属し、仕事が楽しくて仕方のないときだった。これもやりたいあれもやりたいと動き回った結果、朝5時まで会社で仕事した後シャワーを浴びに帰宅し、朝8時、印刷所の方が会社に来る時間に合わせて再度出社するような生活が月の半分を占めていた。「半分会社に住んでる」といわれる筆者が、夫の海外赴任を機に初めて妊娠したとき、「一番妊娠しそうにない人が妊娠したのはいいことなんじゃない?」という不思議なお褒めの言葉をいただいたものだ。

こんなふうに机で10分寝る、などが得意になっていた Photo by iStock
 

幸いつわりもなかったので、ちょっとは気をつけるけど基本は今まで通りという仕事のやり方をしていた。深夜も仕事をするし、「病気じゃないんだから大丈夫」と言われ、好きなお酒を飲んだこともあった。夫は先に赴任先に行って不在だったので、引っ越しの片づけと荷造りは一人でやらざるを得ず、見かねた友人たちが引っ越し直前に家のものを捨てる作業を手伝ってくれた。様々な事情があって出産する場所は夫のいるところしかなく、妊娠34週で飛行機に乗る際には航空会社の方から驚かれ、「明日からは乗れないですよ」と言われた。

しかし、あとでわかった。自分は妊娠・出産を舐めていたと。

予定日の3週間前、翌日初めて現地の産婦人科で健診を受けることになっていた朝、破水をした。破水をすると、48時間以内に出産しなければならない。まだ日本から送った引っ越しの荷物もつく前に出産となった。幸い元気な赤ちゃんが生まれたが、筆者の身体の準備ができていないのに無理に出産したためか、大量の出血がなかなか止まらなかった。大人のおむつをし、痛みもあって腰をかがめてゆっくり歩くしかなかった。日本の病院とは異なって2日で退院しなければならなかったため、健康ではあるが2110グラムと小さく生まれたわが子を連れ、日本で購入したベビーグッズや着替えがないままに自宅での子育てが始まった。