尾崎世界観さん「デビュー9年目の今が、一番苦しい時期かもしれない」

「一瞬で消費される」ことへの不安
神田 桂一 プロフィール

――なぜ芥川賞のノミネートを素直に喜べなかったのでしょうか。

「ロックバンドのボーカルが芥川賞候補になった」とワイドショーなどで報じられ、それについての反応を見て、世間の正直な意見にだいぶやられました。事前にある程度ヒールとしての役割を引き受ける覚悟はしていたけれど、やっぱりいざそういった意見を目にするとかなり堪えましたね。

今の時代、どんなコンテンツも簡単に消費されてしまいます。映画でも2時間あれば長いと言われ、web記事でも「あと3分で読み終わります」と表示される。あれにはゾッとします。自分の書いた小説が、そんな風にあっという間に消費されていく世の中で戦えるのか、不安になったんです。

じっくり待てない世の中になったと思います。自分でもそうなんですよ。そもそも昔は3時間超える映画を劇場に観に行っていたけれど、今はNetflixとかAmazonプライムで100分以内の作品ばかりを選んでしまう。音楽だって、YouTubeでMVを観ても、1分くらい飛ばして、サビから聴いてしまう事だってある。時間がないわけでも、急いでいるわけでもないのに。

 

――残念ながら芥川賞を逃しましたが、心境の変化はありましたか。

悔しかったけれど、でも、自分の作品が賞の候補として選考されるなかで、確かな手ごたえも感じられたんです。尊敬している作家の方々に、自分の作品を読んでもらえた。SNSにも「ここが面白かった」とか、具体的な感想を書いてくれる人がいた。批評のなかには厳しいものも多かったけれど、まずはじっくり読んでもらえたことが嬉しかった。時間はかかったけれど、やっとスタート地点に立てました。

関連記事