競泳の瀬戸大也選手の妻で、元飛込日本代表の馬淵優佳さん。自身は3歳からずっと競技を続け、引退したのは2017年。現在は2人の子の母親となっています。引退後もアスリートの妻としてずっとスポーツと共に生きてきました。
だからこそ伝えたい「スポーツが教えてくれたこと」、連載の第1回では、3歳から始めた飛込という競技について、次第に苦しくなって「辞めたい」と思いながら、やめさせてもらえず、「辞めるのをやめた」という思春期の頃までを伝えてもらいました。それでもスポーツが素晴らしいとなぜ言えるのか、優佳さんの実体験から綴っていただきます。
世界選手権代表に選ばれる
2011年、高校2年生になった私にとって大きな転機が訪れた。
国際大会派遣選手選考会に出場し、世界選手権の代表に選ばれた。この大会で決勝に残ればロンドンオリンピックの代表になれる大きな大会だ。さらにその大会の開催地が私の両親の母国である中国の上海だった。それからメディアからも一気に注目が集まり、中国の新聞にも取り上げられるようになった。結果、決勝に残れなかったものの、今までテレビで見てきたオリンピアン達に混ざって試合ができ、これまでに経験してこなかった緊張感と興奮を抱いた。なにより初めて現地で応援してくれた祖父母の喜ぶ顔は忘れられない。この時ようやく、辞めたくても歯を食いしばって続けてきた意味がわかった気がした。
そこから「好き」という気持ちにまでは至らなかったが、ようやく「自分にはこれしかない」と競技をやってきた自分を受け入れられるようになったのだ。そして、自分が競技をすることで誰かを喜ばせることができることそのものに幸せを感じるようにもなった。
こうして幼い頃よりは少しだけ競技に対する考え方が変わってきたが、大学入学後にまた大きな壁が立ちはだかった。