2021.03.02
# エンタメ

インドネシア大虐殺事件「罪に問われない殺人者」の闇落ちを追う『アクト・オブ・キリング』の衝撃

サブスクで観れる「ほぼ独断」隠れ名作3
高木 敦史 プロフィール

「黙殺された歴史」を映画にしよう

監督は当初、虐殺の被害者たちのドキュメンタリーを作ろうとしていましたが、インドネシア軍部から妨害が入り断念しました。その後、今度は加害者に接触しようと試みた中でアンワルと出会いました。

アンワルは日焼けした肌にスマートな身なり、ユーモアをまじえて話す洒脱な壮年の男性です。しかし映画で表示される肩書きは「アンワル・コンゴ/1965年の殺人者」です。彼は紛れもなく殺人者でした。監督はアンワルに提案します。

「9月30日事件を題材にした映画を作るから、あなたのやったことの再現をしてくれないか?」

常識的に考えてOKなんてするはずがない……と思いきや、アンワルは監督の「殺人の再現」に嬉々として首肯しました。

「俺たちが英雄だったという事実は、もっと広く知られるべきだ」とまで語り、意気揚々です。アンワルの意識の中では、彼らは国家を守った正義の英雄なのでした。

シネマトゥデイのyoutube『アクト・オブ・キリング』の予告編より引用

そういうわけでアンワルを中心に、民兵組織のリーダーや団員たち、はては近所の人々や馴染みのある政治家などが次々に撮影に借り出されます。その様子をカメラは追っていきます。

内容についての打ち合わせ、実際の撮影風景、そしてVTRチェック……かつて映画館の前でダフ屋をしていたというアンワルは、時に自ら映画論を語り、演出を提案し、ユーモアを取り入れて映画を面白くしようと腐心します。それらの合間に、監督はアンワルたちに質問していきます。

「どうやって殺したんですか?」「殺すときに何を思いましたか?」「なぜ殺したんですか?」

アンワルが嬉々として答える内容は、ここで書くには憚られるようなものばかりです。「殺すと金がもらえるから、それでいい服を買うため」など何の臆面もなく、懐かしい思い出話のように語ります。そして最後には決まって言うのです。

「俺たちはプレマンだからな」

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