新型コロナの影響で、在宅ワークが推奨されるようになった昨今。その結果、増えているのが「騒音トラブル」だ。耳が遠くなってくると、つい音量を上げがちになるテレビ。建築音響の第一人者で、新刊『マンションの「音のトラブル」を解決する本』を出版した井上勝夫氏は、年を取ったらテレビを「北側の和室」に置くことを勧める。近所迷惑にならないために、今から覚えておきたいちょっとした工夫を紹介してくれた。
高齢者は「高音域」が苦手
高齢者と若者で、聞こえる音の範囲が違うのはご存じですか? 一般的には、若者はたとえ小さい音でも周波数が高い音は聞こえますが、年をとるとともに周波数が高い小さい音は聞こえにくくなります。

以前、夜間の公園に若者がたむろして困った自治体が、若者だけに聞こえる高周波の音を流して、撃退を試みた例がありました。これなども、若い人と高齢者が聞こえる音の範囲が違うことを利用したやり方です。
とにかく高齢になると、高音域が聞こえにくくなるので、「あれ? よく聞こえない」と思って、年配の方はついテレビの音量を上げてしまいがちです。これが騒音トラブルの原因になってしまうこともあります。
高齢者がテレビの音量を上げる理由はもうひとつあります。それは低い音、つまり低周波の音の問題と関係します。実は高齢者でも低周波の音は、若者と比べてそれほど聞こえる感度が鈍くならずに、ちゃんと聞こえている場合が多いのです。