2021.03.11
# エネルギー

福島第一原発「10年目の真実」…じつは「吉田所長の“英断”海水注入」は、ほぼ“抜け道”に漏れていた

NHKメルトダウン取材班 プロフィール

衝撃の注水量「1秒あたり0・075リットル」

この抜け道には、復水器から冷却水を原子炉に送り込むための「低圧復水ポンプ」がある。このポンプが電源喪失により動かなくなったことで、ポンプに流れ込む水の流れを封じ込める「封水」という仕組みが働かなくなり、原子炉へ注ぎ込まれる海水が、復水器に向かう配管に横抜けしてしまったのだ。

実は、こうした“抜け道”は3号機だけではなく、1号機にも存在していた。しかもその漏洩量は、3号機をはるかに上回るものだった。2013年12月に、東京電力より発表された「未解明事項の調査・検討結果報告」によると、1号機には10本、2号機・3号機にはそれぞれ4本の「抜け道」が存在するというのだ。2011年3月23日までほぼゼロだった1号機への注水量。その原因はこの10本の抜け道にあった。

1号機の注水ラインと「抜け道」。東京電力によれば、「抜け道」は10本に及び、注水は2011年3月23日まではほとんど原子炉には届いていなかった(©NHK)
 

では、これだけの抜け道が存在する1号機の原子炉にはいったいどれだけの量の水が入っていたのか? その詳細を知るには最新の解析コードによる分析が必要だった。

福島第一原発の1号機、2号機、3号機にいつどれだけ水が入り、どのように核燃料はメルトダウンしていったのか、最新の解析コードで分析するBSAF(Benchmark Study of the Accident at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station 福島第一原発事故ベンチマーク解析)とよばれる国際共同プロジェクトが行われていた。

事故の翌年2012年から経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)が始めたこの取り組みは、世界各国の原子力研究機関や政府機関がそれぞれ所有する過酷事故解析コードを改良しながら、福島第一原発事故の進展と現在の状況を分析する世界最先端の研究だ。BSAFに参加する国は徐々に増え、11ヵ国(カナダ、中華人民共和国、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、韓国、ロシア連邦、スペイン、スイス、アメリカ)になった。

その運営を担う機関が東京・港区西新橋にある。エネルギー総合工学研究所。電力会社や原発メーカーのOBに加え、外国人研究者が名を連ねる日本でも有数の研究機関だ。同研究所原子力工学センターの内藤正則は、福島原発事故前から日本独自の解析コードSAMPSONを開発し、BSAFプロジェクトの中心的役割を担う人物だ。

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