2021.03.11
# エネルギー

福島第一原発「10年目の真実」…じつは「吉田所長の“英断”海水注入」は、ほぼ“抜け道”に漏れていた

NHKメルトダウン取材班 プロフィール

2017年2月、NHKでは内藤を含めた専門家を交え、1号機への注水など事故の進展に関する分析を行った。内藤は、BSAFの取り組みを通じて各国の研究機関がシミュレーションから導き出した“現時点で最も確からしい”としている最新の注水量を告げた。

「1秒あたり、0.07〜0.075リットル。ほとんど炉心に入っていないことと同じです」

国際機関が検証している最新の注水量。多く見積もっても、1分あたり1.5リットルペットボトルの3本分程度しかないわずかな注水量に専門家たちも衝撃を受けた。5年以上にわたって事故の検証を続けてきた内藤が提示したのは、この記事の冒頭でIRIDが原子力学会で発表した数値より具体性を持った数値だった。

 

遅すぎた注水開始…生み出された大量の核燃料デブリ

しかしながら、1号機の注水ルートに「抜け道」がなければメルトダウンを防ぐことができたのか? 答えはNOだ。吉田が官邸の武黒からの指示を拒否し、注水を継続していた局面は3月12日午後7時過ぎのこと。しかし、SAMPSONによる最新の解析によると、1号機のメルトダウンはこの22時間前から始まっており、消防車による注水が始まった時点では、核燃料はすべて溶け落ち、原子炉の中には核燃料はほとんど残っていなかったと、推測されているのだ。

注水の遅れは事故の進展や廃炉にどのような影響を与えたのか。内藤は「MCCIの進展に関してはこの注水量が非常に重要になる」と口にした。MCCI(Molten Core Concrete Interaction)は“溶融炉心コンクリート相互作用”と呼ばれ、溶け落ちた核燃料が原子炉の底を突き破り格納容器の床に達した後、崩壊熱による高温状態が維持されることで床のコンクリートを溶かし続ける事態を指す。

SAMPSONによる解析では、MCCIが始まったのは3月12日午前2時。1号機の原子炉の真下の格納容器の床にはサンプピットと呼ばれる深さ1.2メートルのくぼみがあり、そこに溶け落ちた高温の核燃料が流れ込むことで、MCCIが始まった。

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