毎日使っているお金。その本質について考えたことがありますか? お金の本当の姿を知れる「マネー・ライブラリー」へ、ようこそ。

間室道子さんが選書
お金と時間の関係。

お金で買えない代表といえば愛、平和、命ですが、時間もそのひとつ。時間について思いを巡らせると、「本当に買えないのか?」「買えないのになぜ人はじたばたするのか?」というスリリングな問いが生まれ、思考をさらに深めてくれます。お金と時間のあいだで揺れる文豪、女性たち、若い夫婦。彼らが織りなすどこか滑稽で切ない読み味の本をご紹介。

『〆切本』
左右社編集部/編

作家たちの〆切をめぐるアンソロジー。言い訳を繰り返し、仮病や居留守を使い、編集者の催促から逃げる彼らに「そんな弁解が通るものか!」と驚き、呆れ、笑いたくなります。吉川英治先生のエピソードは必読。(左右社)

『占』
木内昇/著

男の心を知ろうと占い師をはしごする女性。彼女が得たかったのは「彼の本心を言い当てる言葉」以上に、愛の時間は無駄ではなかったという保証のようなもの……。占いがテーマの、どれも切ない七編です。(新潮社)

『賢者の贈りもの-O・ヘンリー傑作選Ⅰ-』
O・ヘンリー/著 小川高義/訳

クリスマスプレゼントが買えない貧しい若夫婦。彼らは相手に内緒で、大切なものを売ってお金を作ろうと決意。感動的なのは、生きてきた全てともいえる「時間」をお金に替えるから。夫婦の深い愛を感じます。(新潮社)

PROFILE
間室道子
書店員
まむろ・みちこ/代官山 蔦屋書店文学担当。書店員キャリア30年以上。「元祖カリスマ書店員」として知られ、様々なメディアで本を紹介する。雑誌『婦人画報』など連載多数。

 

原陽子さんが選書
やさしいお金の教科書。

毎月、通帳の残高とにらめっこする現実……。時にはその呪縛から逃れて自由になりたいけれど、そもそもお金って何なんでしょう? お金をテーマにした絵本を、子どもよりもお金を自由に使える立場である大人が読むことで見えてくる世界があるはず。一読すると、お金は味方でもなく敵でもない、フラットかつ確かな存在に思えてきます。

『ほんとにほんとにほしいもの』
ベラB.ウィリアムズ/作・絵 佐野洋子/訳

何でも「ポチッ」と買えてしまう現代では、この本の主人公のように「本当にほしいもの」を何度も悩み、逡巡することは貴重かも。やっと最後に選んだアイテムに、家族や友達との絆が透けて見えるよう。(あかね書房)

『ハリネズミと金貨』
V.オルロフ/原作 田中潔/文 V.オリシヴァング/絵

友人のリスやカラスの善意で必要なものがまかなえるようになり、使い道のなくなった金貨。「お金は本来、人と人が力を合わせて生きていくことを助けるもの」という訳者の解説に、お金の意味を考えさせられます。(偕成社)

『買物絵本』
五味太郎/著

道具を買うと「みずからの可能性の追求」と「みずからの実力の限界」を買える。お金を寄付すると「人助け」と「満足感」と「お金で済ませるクールな人」という評価を買える。お金の自由と不自由の哲学。(ブロンズ新社)

PROFILE
原陽子
読書アドバイザー
はら・ようこ/出版社で絵本専門誌や絵本編集に携わり、フリーに。育児誌などでおすすめ絵本を紹介。JPIC読書アドバイザー。「kodomoe web」にて「今日の絵本だより」を連載中。

 

村井理子さんが選書
お金をもっと知りたくなる。

お金って命の次くらいに大切なものなのに、「お金ってなんだろう」と考えるとわからないことばかり。金融関連ワードも知らぬまま生きているけれど、子どもにはお金の大切さを教えたいと本気で考えているんです……。貯蓄ができないのでしっかり勉強をしないとまずい状況。まずは浪費癖をどうにかしたい! あ、昨日ネットでコートを買っちゃいました。

『MONEY-もう一度学ぶお金のしくみ-』
チャールズ・ウィーラン/著 山形浩生・守岡桜/訳

つい知ったかぶりをしてしまう仮想通貨や金融システムなどを、これを読むだけで少し理解できはじめたような気になれる(笑)。まさに「もう一度学ぶ」一冊ですね。(東洋館出版社)

『本物の大富豪が教える金持ちになるためのすべて』
フェリックス・デニス/著 井口耕二/訳

タイトルに惹かれて手に取りました。大富豪になるために取るべき行動や、考え方など、どれも説得力抜群。なるほど、とうなずきながら読みました。夢とお金のバランスをどう取るか、という話でもあります。(文響社)

『お父さんが教える13歳からの金融入門』
デヴィッド・ビアンキ/著 関美和/訳

アメリカの中高生が手に取る、マネーの教科書的存在。学ぶ時に難しいものばかり選ぶ必要はないと思っているので、子ども向けでわかりやすいものをチョイス! 関さんの翻訳が大変読みやすい。(日本経済新聞出版)

PROFILE
村井理子
翻訳家
むらい・りこ/訳書に『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(きこ書房)など。webマガジン「考える人」などでエッセイストとしての連載も持つ。ファーストレディ研究家の顔も。