「原子力ムラ」の代理人か…日本の原子力行政が今も抱える「3つの問題点」

福島原発事故から10年も経過したが…
新藤 宗幸 プロフィール

2012年12月、第二次安倍晋三政権がスタートした。原子力規制委員会の委員の任期は5年だが、初代に限って委員長を除く4名の委員のうち2名を任期2年、2名を任期3年とした(再任可)。

これ自体は委員の同時交代を避けるためのものだが、安倍晋三政権は2014年、任期2年の島崎邦彦と大島賢三を再任しなかった。政権は任期切れ以外の理由を説明していないが、島崎は地震学者として再稼働に疑問を提示していたこと、大島は国会事故調の識見をもとに原発再稼働に慎重な姿勢を取り続けたことが、理由ではないかと憶測された。

安倍晋三前首相[Photo by gettyimages]
 

島崎と大島の後任は、田中知と石渡明であった。田中知は東京大学工学教授の原子力工学者であり、「原子力学界のドン」といわれてきた人物である。また石渡は東北大学教授だが、岩石の専門家である。「地震大国」にもかかわらず、委員会から地震学の専門家は姿を消した。

2015年、任期3年とされた更田と中村のうち、更田は再任され中村は退任した。中村の後任は放射線医学の専門家とされる東京医療保健大学教授の伴信彦である。そして2019年9月に田中俊一委員長が退任した。後任は原子力工学者であり大阪大学教授の山中伸介である。

こうして現在の原子力規制委員会は、更田を委員長、田中知を委員長代理とする原発「推進派」を軸として構成されている。原発を「基幹電源」と位置づけた先の安倍政権の意を呈するものといえよう。「独立性」が担保されているとは言い難い現状だ。

原子力規制庁を支配する警察官僚

人事に関する疑問は、規制委員5人だけでなく事務局である原子力規制庁にも共通する。規制庁は原子力安全・保安院、原子力安全委員会、文科省、環境省の原子力技術官僚から構成されて、2012年に発足した。

現在の原子力規制庁次長(原子力安全人材育成センター所長兼務)、原子力規制技監、緊急事態対策監、核物質・放射線総括審議官ら幹部は、経産省の原子力安全・保安院の出身者であり、経産官僚を母体とした組織である。

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