「犠牲者」に見えた山田真貴子氏
「位打ち」という言葉がある。司馬遼太郎の歴史小説に登場し、人物にふさわしくない位階を次々と与え、ついには人格およびバランス感覚を失わせ、自滅させていく手法、とされる。
総務省出身の内閣広報官、山田真貴子氏が東北新社から7万円超の高額接待を受けていたことが発覚し、ついには辞任に至った顛末に、筆者は「位打ち」と重なる印象を持った。
断っておくが、山田氏は女性初の内閣広報官、首相秘書官、総務省局長を歴任した優秀な人材だ。だが、個人の能力の問題ではなく女性をうまく使いこなせなかった組織が悪い、というのが、長年、全国紙の経済記者として霞が関を取材してきた筆者の率直な感想だ。
そもそも「1人あたり7万円超」というのは和牛ステーキ等の食材の単価ではなく、高いワイン等をグループで空けたからではないかと推察される。とはいえ、庶民感覚とはかけ離れた飲食にバッシングが集中した。
本人も、菅首相も職にとどまる意向を示していたが、山田氏は衆議院予算委員会での答弁後に一転して体調不良を理由に入院、辞任を申し出た。同じ会合に同席した総務省官僚は処分されているものの職を辞してはいない。痛々しさを感じさせる顛末に、辞任後は同情する声も出てきたのは、山田氏が組織に翻弄された「犠牲者」に見えるからではないだろうか。

もともとは法曹界志望だった
山田氏は旧郵政省出身で早稲田大学法学部卒。今でこそ私大出身者が増えている霞が関の官僚ながら、1984年入省の山田氏の年代では東大卒が多勢を占め、私大卒は極めて少ない。