辞任した山田元広報官、霞が関に切り捨てられた「被害者」だと言える理由

「女性初」ともてはやされたが…
藤澤 志穂子 プロフィール

例えば財務省・金融庁の官僚との飲み会は、ほぼ例外なく「ワリカン」であった。これは1998年に発覚した旧大蔵省の接待汚職で逮捕者や自殺者を出し、財務省と金融庁に解体された苦い過去を引きずっているため。

この事件を機に2000年施行の国家公務員倫理法に基づく規定ができ、許認可の相手となる利害関係者からの接待を禁じられ、自己負担の会食も1万円をこえる場合は事前の届け出が求められるようになった。

報道機関は許認可とは関係ないが、それゆえ他省庁の取材では、先方が「奢られて当たり前」と考えているらしい局面もないではなかった。

金融庁のある幹部は、監督先である金融機関との情報交換の場は基本的に日中、職場での面談かワリカンでのランチ、と話していた。一方で旧大蔵省級の不祥事を経験していない総務省は、接待が常態化していたことが伺える。そんな組織で問題意識を持ち、国家公務員倫理法に基づき自分だけ不参加、という行動は、たとえ正論だとしても取りにくいのではないだろうか。

NTTの接待問題で、加藤勝信官房長官は山田氏について「すでに退任して一般人である」ことを理由に事実確認をしない意向を示した。退職金の有無や受け取りの可否についても「プライバシーに関すること」として明らかにされていない。

加藤勝信官房長官[Photo by gettyimages]
 

根拠とする規定や法律はあるのだろうが、「国民の税金で雇用されている公務員なのに」という違和感はぬぐい切れない。山田氏の辞任に寄せて、政府が一連の問題を闇に葬り去ろうとしているかにも見える。

「女性初」ともてはやしておきながら、何かあれば真っ先に切り捨てる。そんな山田氏の処遇を見ていると、とてもやるせない。ここまで「悪目立ち」してしまった山田氏の再就職は、総務省退官直後よりもはるかに難しくなってしまっただろう。日本はまだまだ男社会なのである。

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