3.11から10年…福島の「情報災害」が未だに払拭されない理由

福島の今を知るための「5つの論点」
林 智裕 プロフィール

3)食の安全は大丈夫なのか?

続いて、食の安全性について。現在の日本の食品基準は「食事の半分が放射能汚染されている」という有り得ない前提で制定されたもので、海外での一般的な基準に比べ10倍以上厳しくされています。(日本100Bq/kg、米国1,200Bq/kgなど)

詳しくは2018年の記事『福島の米「食べて応援は自殺行為」とまだ信じている人に伝えたいこと』https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57961)に記してあります。

放射線の影響で健康被害リスクが検出される下限が「100mSv【100,000μSv】(この量の被曝でガンになる確率が0.5%上がると言われている)」とされている中、仮に100Bq/kgという基準値上限まで汚染された米だけを用意したと仮定しても、この値に達するまでに白米で512万8,200杯分が必要になる計算です。

ですから当然、基準値を超えたものを多少食べたところで、人体に全く影響はありません。

Gettyimages

しかも、基準値を気にする以前に、そもそも出荷されている福島県産品からは放射性物質自体がほぼ検出されていないのが現状です。そうなると白米での換算量はさらに増える一方、食塩の致死量は体重1キログラムあたり、0.5~5グラムと言われています。塩分やカロリー、ストレスなどに気を付けた方がよほど健康にとって有益と言えるでしょう。

https://fukumegu.org/ok/contentsV2/

そもそも原発事故とは無関係に、私たちが普段から食べている食事には元々、自然界に存在するカリウムやヨウ素が含まれており、これらによる内部被曝の方が桁違いに多い現実もあります。それらの状況は、実際に食べた食事と同じものを測定し続けたコープふくしまの「陰膳検査」での実測データからも明らかです。

https://www.fukushima.coop/kagezen/2017.html

なお、この検査では現在、検査した50世帯すべてで放射性セシウムが1キログラムあたり1ベクレルの検出限界値を7年連続で下回っていることも追記しておきます。

https://news.yahoo.co.jp/articles/6a3af6dfe5036f60bc6a8313a17e8712aa56f601

ただし、こうした基準や検査が必ずしも良い結果ばかりをもたらしたわけではなく、近年ではかえって風評の温存と拡散に繋がっているとの指摘もあります。

「実際の安全とは無関係」と言えるほど厳しい基準値と検査イメージが独り歩きしたことで、「それを越えたら即座に危険。むしろ基準値以下でも危険」だとか、「未だリスクが高いからこそ検査がいつまでも必要とされている」かのような誤解も広がりました。

結果として、現場では、それをさらに厳しくエスカレートさせた自主基準が求められたり、稀に基準を僅かに超えたものが1つ出ただけでも出荷が全て止められ打撃を受けた挙句、「ほらみろやっぱり福島県産品は危ない」「だから食品以外のアレもコレも全て本当は危ないに決まっている」などの風評が再燃することにも繋がりました。

 

「安心を得るため」むやみに厳格な基準値の設定を続けることは、状況の変化によって次第に「むしろ安心を遠ざける」副作用が判ってきました。日本の食品基準を国際的水準と同等まで是正する政策が求められます。

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